テイスティング・ルーム第3回
東京のとあるバーに集まる男女3人。
モルト通とはまだまだいえない初心者ながら、
マスターに勧められるモルトをテイスティング、勝手なおしゃべりをしています。
話の内容については、まあ大目に見てあげてください。
今回のウイスキー
- グレンフィディック18年(オフィシャル)
- 1988年タリスカー12年(サマローリ)
- 1974年スキャパ25年(ダグラス・レイン OMC)
登場人物
マスコミ関係の会社に勤務。おいしいものをおいしいと言える、20代の素直な女性。
通販関係の会社に勤務する30代の男性。以前は著述業を副業としていたので、表現は独創的。
金融関係の会社に勤務する30代の男性。仕事がシビアな割に、舌の方の評価は優しい。
とあるバーのマスター。?代の男性。
グレンフィディック18年(オフィシャル)
今日の1本目は、グレンフィディックの18年です。
去年の12月に輸入元が、メルシャンからサントリーに変わったばかりですね。
この18年については「エインシェント・リザーヴ」という称号が付されています。
オフィシャルですから、当然43度に加水調整されていますね。
どんな感じですか。
あ~、良い香り。グレンフィディックにしては、色が濃いかな。
グレンフィディックは、かなりポピュラーなモルトですが、
18年は、以前から上品なモルトとして定評があります。
色は、ゴールドというよりは、青みがかかってますね。
洗練された、上品な香りだ。
(ノージングからテイスティングに移って)
粉っぽい、飴みたいな印象。まろやか。
少しドライな印象もあるけれど、深い甘みがある感じかな。芳醇な感じも。
開栓してしばらく経っていますよね。
2週間くらいでしょうか。
香りの立ち方が、新鮮で切り立てのような感じですね。
これは「麦こがし」だな。
これまでグレンフィディックについては「軽やか」というイメージがあるんだけれど
今までの感じとは随分違いますね。深さというか、まろやかさというか…。
やっぱり熟成が長めになっていることはあると思いますね。
うん、重いというか、しっかりした印象は、私も感じます。
18年というけれど、もっと年数が行っている感じがする。25年とか。
時間が経ったら、だんだんと甘さが増してきたわ。
最初は、樽の香りなんだけれど、口に入れると深い甘さや香ばしさが出てくる。
舌触りは、メロウで、余韻が続く印象。でも、フィニッシュはスっと消えていく。
ドーンと来て、スっと消えるような印象。
「すっきりして、まろやか。早熟なグレンフィディック」
良いね、そのフレーズ。
18年は、これまで「エクセレンス」と言うのが出ていましたが、
それが終売になって、この「エインシェント・リザーヴ」に切り替わっています。
そして、15年についても「ソレラ・リザーヴ」という称号で出てきています。
今回、サントリーが、新たに輸入するにあたって、12年もラインアップに加えて来てスタンダードとしています。
この結果、従来からあった「年数表示のないスタンダード」は、ラインアップから外れました。
全体の流れが、年数表示に移ってきていますからねえ。
性別でいったら、男性かしら。やさしい男性で、美形。玉三郎とか。
言えてる、言えてる。
「強烈な個性のない、洗練さ」みたいなところが、グレンフィデフィックらしさだからね。
若い頃の「ポール・モーリア」
またまた出ましたね。今日は、音楽家ですか?
さわやかだけれど、ゴージャス。それでいて落ち着いていて。
気品があって、癖はなく…。
素晴らしい。
モルト好きの人が、お客さんをもてなすのには、ぴったりの一本ですね。
格式の高さで、失礼にもならないし。芳醇な、おいしい味で、癖が無いし。
宣伝になりますが、3月17日土曜日夕刻のテイスティング会で、
サントリーの方に来ていただいて、新しいグレンフィデッィックのラインアップを飲み比べして頂くつもりです。
記念品を出してくれるようですし、もしかしたら、秘蔵のモルトとかが出てくるかもしれません。
期待できそうですね。
1988年タリスカー12年(サマローリ)
それでは、次のに行きましょうか。
サマローリのタリスカー12年です。
ちょっといかつい印象のボトルなんですが、19世紀に使われていたものの復刻です。
それで、栓もコルクの打ち込みになっています。
蒸留は1988年で、度数は45度です。
すごい強烈な香り。セメダイン、エステルっぽい。
この香りは何に喩えたらいいんだろう。
子供の頃に、ストローの先に赤いボンドみたいなネバネバしたのを付けて
膨らまして遊びましたよねえ。
ゴム風船とか言ったっけ。
そうそう、それそれ。
すーっと鼻に入ってくる。海の香り。
一口含むと、ふわーっと口の中に広がって。すっごーい。
口のなかに染み込んでくる感じ。
オフィシャルのタリスカーにある、口の中で爆発するような印象はないですね。
ジワジワと潮が染みてくる感じがするぞ。
でも、この味自体はタリスカーだ。
度数は45度ですから、オフィシャルとほとんど同じなんですがね。
爆発はせずに、ヨード臭とか海の香りがパッと広がってから、すぐに収縮する感じ。
収縮した後に、甘みの残る感じ。
印象は、オフィシャルとは違いますが、味は同じですよね。
さっきのグレンフィディックは、お菓子で言うと「麦こがし」だったけれど、
このタリスカーは、「塩せんべい」だね。
僕としては、塩せんべいに、刻んだ昆布も付けてもらいたいね。(笑)
あー、お茶がうまい。
なんですか、それは。
加水するとどうかな。
あっ、ヨード臭が強くなってきたね。後、甘みも増してきた。
「塩せんべい」に砂糖をまぶしたような。
本当だ。甘い。
収縮しないで、甘さが残るね。
確かに、タリスカーの味なんだけれど、オフィシャルに感じるスパイシーさはないですね。
そうそう、タリスカーって言うと、「暴れん坊」とか「荒っぽさ」とかいう感じなんだけれど、それは全くないですよね。
サマローリらしい上品さですかねえ。
おいしいんだけれど、おとなし過ぎて、ちょっともの足りない。
そこがサマローリなんですよ。
Iさんだったら何に喩える?
どうしたの、今日はコメントないよ。
もしかして飲み会疲れ?
うーん、そうですね。スマップの草薙くん…それとも稲垣くんかな。
やさしくて、上品で。
私にとっては、出ている個性が少し物足りない感じがします。
僕は、リチャード・クレイダーマン。
やっぱり、音楽家で来ますか。
上品で、おとなくて、やさしいしいけれど、個性もあって。しかも、しっかりと海を感じる。
うまいねえ。
確かに個性を十分に持ちながらも、飲みやすく仕上がっていますね。
1974年スキャパ25年(ダグラス・レイン OMC)
最後の一本に移りましょうか。スキャパの25年です。
OMCのボトリングで、蒸留は1974年。
現在、出回っているものは、10年前後の比較的新しいものが多いので、70年代のものは珍しいと思います。
ただし、シェリーの長期樽詰めなので、スキャパの個性が、どのようになっているかを味わってみてください。
スキャパ好きのTさん、たくさんコメントくださいね。(笑)
色はしっかり出ている。シェリー樽の深い色。
香りは、杉の樽に詰め込んだスキャパだね。
シェリー樽に入れられていたんですよね。
でも、最初の香りには、シェリーの感じは出てこないね。
やっぱりオークとか杉とかの樽香。
度数は、50度に調整されています。味の方はいかがですか。
あっまーい。ねっとりして、スライム状態。
シェリーの甘さ、蜜の甘さ。後の引き方は、確かにネバネバして、スライムみたいだ。(笑)
黒蜜みたい。
後味の方はどうですか。
アルコールの刺激とともに、後の方からピーティーさも感じますね。
でも、スキャパらしさという感じとも違うような。
それは、25年も樽詰めされていますから、
10年物のスキャパの持つ「とげとげしさ」のような個性は無くなっていますね。
それよりも70年代の個性として、ピーティーさの方が前に出ているように思います。
誰でも、おいしいと思うのではないかしら。
10年くらいの若いスキャパは、好き嫌いが分かれますが、
これは誰でも抵抗なく飲めるのではないのでしょうか。
性別でいったら、女性かしら。黒木瞳とか。
僕の印象は、梅沢富美男。
ねっとりした個性は、そんな感じですね。
ウイスキー好きの太地喜和子」
あ~、音楽家シリーズから離れてしまう。(一同、笑)
加水すると、スキャパらしさが出てきますね。
コッテリ感がなくなって、モルトらしくなってくる。
ポール・モーリア、リチャード・クレイダーマンと来たから、ボストン・ポップスかな。
ベニー・グッドマン?駄目?
(悩み、苦しみ、もがく)
総括すると、どうですか。
私の一番は、スキャパかしら。二番はグレンフィデックで、三番目は、タリスカー。
僕も、Iさんとおんなじ。
それじゃ、値段の順番じゃないですか。(笑)
僕は、みなさんと違って、タリスカーとスキャパが同列の一番。
ちょっと遅れて、グレンフィデックですね。
スキャパは、どんな気分のときに飲みますか。
僕は気分を転換したいときに。
落ち込んでいるときに。太宰治になったとき。
お誕生日とか、記念日とか大切な日に。
味が奥深くて、厚みがありますからね。
ゴージャス。叶姉妹とは、ちょっと違うけれど。(笑)
タリスカーは、気分の良いときの、一杯目がいいですね。
タリスカーは悪くないんだけれど、「ケンタッキーフライドチキンの優香」なんだよね。
えっ、何それ?
「おいちっ!」という感じで軽いでしょ。
……。
僕は、OMCのスキャパはおいしいし、リッチではあるんだけれど、
あまり評価できないんです。
スキャパらしさというのは、かすかなピーティーさくらいで、強烈な個性がないですよね。
ゴージャスで、リッチな物なら、20年選手で探せば、他にいくらでもありそうだし。
今日の三本以外の選択肢も考えるなら、確かにそうかもしれないね。
まあ、70年代のスキャパというのを、我々は、個性としてあまり経験してないですしね。
ただ、今回は、樽がシェリーなので、その辺の難しさとか、苦しさというのはありますが…。
苦しさなら、音楽家での喩えを考える方が、もっときついよ。(一同、笑)