テイスティング・ルーム第17回
いつものテイスティングルームと言えば、モルト通とはいえない初心者の男女3人が、マスターに勧められるままにテイスティングしては、勝手なおしゃべりをするわけですが…。
本日のテイスティング・ルームは、スペシャル・エディション。
アメリカ出身のヘビー・コレクターでモルト通のテイラー・スミッソンさんと、モルト・ファンの間で名高いサイト、M’s Bar主宰のMUNEさん、そして、モルト評論家でもある、とあるバーのマスターが、テイスティングしながら、モルトに関する蘊蓄を語り合います。
3人の猛者に挟まれ、右往左往するのは、レギュラーのKさん。
はてさて、どうなることやら。
今回のウイスキー
- アイラモルト8年(ダンベーガン)
- ボウモア8年(オフィシャル)
- 1981年軽井沢20年(武蔵屋PB)
登場人物
日本国内の外資系金融機関にお勤め。エグゼクティブ。
オフタイムでは、モルト通、東京のバー評論家として名高い人物。
『ウイスキーマガジン』誌などを通じて、日本のバーの魅力を世界に発信している。
モルト・ファンが集うお馴染みのサイト、M’s Barのオーナー。
サイト上のBest/Worstでも、テイスティング・コメントを掲載中。
ニューボトルから、レア物、オールドボトルまで、守備範囲は極めて広い。
金融関係の会社に勤務する男性。
仕事がシビアな割に、舌の方の評価は優しい40代。
とあるバーのマスター。?代の男性。
本日は、特別企画ということで、日本のモルト通として、 5本の指に入るお二人に来て頂きました。
やんや、やんや。
今日は、ゲストお二人の、最近の一押しテーマに沿った2本を味わってから、 ジャパニーズ・モルトの新潮流とも言える1本で締めたいと思います。
Kさん、そういう訳で今日は特別企画です、常勤二人も欠席ですし。
そうですね。
僕は、「おいしい」、「これ好きです」だけで良いですね(笑)。
とても気楽です。
最初は、どなたの企画テーマになるのでしょうか。
最初は、MUNEさんのサイト、M’s Barの掲示板で盛り上がっている 「謎のウイスキー」特集です。
次は、スミッソンさん発掘、お薦めのボウモアと、最近のボウモアの飲み比べ、 そして最後は、大手業務卸の武蔵屋さんと国内ウイスキー・メーカーとのタイアップである 軽井沢20年を味わってみたいと思います。
はあ、わかりました。
盛りだくさんで、目まぐるしいですね。
途中で、訳わかんなくなっちゃうかもしれないね(笑)。
それでは、よろしくお願いします。
よろしく。
よろしく。
アイラモルト8年(ダンベーガン)
それでは、最初の企画から始めましょうか。
ちょっと前、MUNEさんのM’s Barの掲示板では、 「フィンラガン」は一体どこの蒸留所か、 というので盛り上がっていましたね。
ええ、そうでした。
その後、話題の進展はありましたか。
う~ん、特に動いていないですね。
私個人としては、あの中で、HIDE麻呂さんが書いておられる 「フィンラガン=ラガヴーリン」という説が正しいように思うのですが。
以前、MUNEさんは、カリラだと言われてましたね。
かつて、木下さん(木下インターナショナル)が、 60度の12年物のフィンラガンを輸入された時に 「フィンラガン=カリラ」説を唱えられたのは、MUNEさんだったんでしょうか。
確か、その当時、どちらかにMUNEさんが書いていらっしゃったんじゃないかと 記憶しているんですが。
う~ん、あの。
そうですね。
その辺のところ、ちょっと憶えていないんですが。
私もその話を間接的に聞いて、鵜呑みにしていたんです。
あの当時には、自分自身がテイスティングして、これがカリラだと確信した訳ではなくて、 最初のイメージ「フィンラガン=カリラ」で、あっちこっちで言ったり、書いたりしましたし、 このテイスティング・ルームの最初の頃で、フィンラガンを取り上げた時にも、 カリラだと説明しています。
ところが、あらためてフィンラガン15年をノージングしてみて、 やっぱりカリラじゃないなと思ったわけです。
言い訳になっちゃいますけど、やっぱり味だけでは難しいですね。
本当に、そうだね。
まあ、とても難しい「謎のウィスキー」な訳ですが、 前振りはさておき、最初の1本はこれです。
ダン・ベーガンのアイラ・モルト8年です。
なるほど、謎めいてますね。
ちょっと前、MUNEさんのサイトで盛り上がった「謎のウィスキー」なんですが、 ISLAYのサイトの過去ログを見て頂ければ判りますが、実をいうと、フィンラガンも、 グレン・エドワーズも、イリアックも、かつて、このテイスティングルームで取り上げてきた テーマなんです。
ミステリー・モルト・ウイスキー 右からグレンエドワード、イリアック、ダンベーガン・シングルアイラ、フィンラガン15年
ああ、そうなんですか。
それで、最初の頃に「フィンラガン=カリラ」という勝手なことを、 このテイスティング・ルームで言っていたわけです。
はあ、なるほど。
グレン・エドワーズに関して言えば、ボトル裏面の説明から判断するに、 クレイゲラヒであることはまず間違いないと思われますね。
そう思いますね。
Sさんが、たまたま、まだお飲みになっていらっしゃらないというので、 ダン・ベーガンをテイスティングする前に、 グレン・エドワーズをちょっと飲んでみましょう。
実を言うと、先日MUNEさんが気になっておられて、 うちに来てお飲みになってるんです。
あっ、そうなの。
どんな印象でしたか。
ああ、こういうモルトもあるんだという感じでしたかね(笑)。
まあ、若いですからね。
このグレンエドワーズは、創業年、エピソードなどから判断するに、 説明自体が正しいとすれば、クレイゲラヒに間違いないわけですが。
判らないのが、このフィンラガンですね。
ただ、自分としては、HIDE麻呂さんの言っている、 ラガヴーリン説が妥当な線じゃないかと思うんですよ。
最初のフィンラガンを見た時に、カリラにしては色が異様に濃いなと思ったんですよ。
こんなに赤いカリラは初めてみたなという記憶があります。
ただ、もう、あの60度のフィンラガン自体は無いので、何とも言えないんですが。
このフィンラガン15年も、色が濃いですよね。
ああ、本当に赤いですね。
ちょっと飲ませて。
カリラとは、ちょっとピート感が違うようにも思いますが。
香りからすると、ラガヴーリンとも違うようにも感じられるんですが、 ただ、カリラよりはまだラガヴーリンに近いと思います。
確かに味わいは、ラガヴーリンのように思いますね。
香りは、メントールと塩素系。
この間のFrom the caskのカリラを半分に薄めたような香りです。
ただ、出所を考えるとラガヴーリンが妥当だと思いますね。
まあ、名前を隠すところなどを考えると、そうかも知れませんね。
すいません。カリラの「花と動物」を1ショットください(笑)。
飲み比べですか。
これしないと判らない。
これやっても判らないこともあるけど(笑)。
でも自分で、納得したいから。
イリアックについて言えば、トップの香りがラガヴーリンだと思うんですよね。
私の一番知っているラガヴーリンの、あの香りがするんですが。
某酒販店のHPでは、ラフロイグと説明されていたとのことですが、 僕も、これはラガヴーリンと思いますね。
香ばしいという表現になるんですかね。
ええ、ちょっと焦げたという感じですね。
あと、手に付けて擦ったときに感じる「正露丸」の匂いですね。
漢方薬の苦みばしった部分ですね。
口に入れても若干苦いですよね。
この当たりが、ラフロイグとの決定的な違いですよね。
ラフロイグは最後まで甘いですよね。
ピーティだけれど、甘いんですよね。
フィンラガンは、ちょっとラガヴーリンとも違うようにも思うんですが。
イリアックは、間違いなくラガヴーリンだと思います。
フィンラガンについて言えば、私自身は、最初のピートの香りは、 タリスカーを連想したんです。
ちょっとヨード臭いような。
この間、飲んだカリラに、このフィンラガンの、印象に近いものがあったね。
「花と動物」のカリラは、やっぱりカリラそのものでしょう。
そうですね。
その「花と動物」は開封してから随分時間が経ってます。
あと、ロットナンバーも古いので、わりと初期のものですね。
ああ、軽く感じますね。
という訳で、「謎のウィスキー」ですが、前振りの3本、 フィンラガン、グレン・エドワーズ、 そしてイリアックを味わっていただきましたので、 今日の本題に参りましょうか。
随分長い前振りになりましたね(笑)。
あらためてダン・ベーガンの アイラ・シングル・モルト8年です。
度数は43度で、ノン・チリ・フィルターですね。
オフレコですけど、さほど高価ではないので、 気楽にミステリーを楽しめる のではないかと思います。
参考になるかどうかは判りませんが、 ボトリングは、ウィリアム・マックスウェル社です。
色は、赤みがかっていますね。
粘り自体は中程度かな。
ちょっと香ばしい香りがありますね。
それとピートの香り。
最初、一瞬ボウモアを連想してしまった。
埃っぽい香り。
ああ、なるほど。確かに埃っぽい。
43度のノンチルでしたかね。
ええ、そうです。
46度のノンチルだったら、わかるんですけど。
わざわざ43度のノンチルと書いてあるんです。
不思議ですね。
味わいの方も不思議ですね。
香りは濃厚なのに、口に入れると軽いですね。
本当に軽い味わいですね。
香りの方は、埃っぽさから、ペッパーに変わってきた。
埃っぽいのは、ノンチルのせいでしょうか。
普通あまりないでしょう。
ラガヴーリンでは時々ありますが。
最初の香りに、ボウモアを感じてしまったのが、すごく気になるのですが。
甘くて、ちょっとクリームっぽい感じで。
口に含むまでは確かにそうですね。
ただ、口に含んでしまうともうボウモアでは無くなってしまって。
ラガヴーリンとボウモアで、ヴァッテッドしたのかな。
シングルモルトって書いてありますし(笑)。
まさに謎ですね。
最初の香ばしい印象は、ラガヴーリンじゃないかと思ったんですが。
巷の噂でも、ラガヴーリンという説が有力ですね。
ちょっとwoodyな感じもある。
難しいですね。
やはり謎は深まる。(笑)
ボウモア8年(オフィシャル)
それでは、クロスして次の企画に行こうと思います。
よろしいでしょうか。
次は、ボウモアの8年、イタリア向けです。
スミッソンさんが発掘というか、見つけてきて、これは良いよと、 みんなに飲ませまくっていたモルトです。
同好会のセミナーで、 スミッソンさんが振る舞っていらっしゃったそうですね。
僕も、とても好きなモルトです。
お手頃価格で、とても美味いということですね。
僕が見つけたのと同じ時期に、HIDE麻呂さんも 別のルートで見つけたみたいですね。
このボウモア8年の話題は、M’s BARには出ていないですね。
確かYahoo!の方では書かれていましたね。
ボウモアのフレーバーで面白いのは、 3~4年くらい前にブラインド・テストをやっていて オーヘントッシャンを出したときに、 ボウモアと間違えた人がいました。
当時、ボウモアの味がちょっと変わってしまっていて、 また、グレンギリーでも同じように変な味がすると思ったり、 どこかで飲んだら、エドラダワーでも、かなり近い味がすると 感じられたこともあった。
それで、海外のモルト・サイトの掲示板に、 「最近モルトの病気が広まってますか」と質問を書いた。
アメリカにモルト通で知られるBUSHIDOさんという人がいます。
彼は、日本人ではないのですが、その質問に対して、 「私もそう思います、 とくにボウモアの味がおかしくなっているようです」 という回答をくれた。
その時に彼は、この香りを「French whore perfume、 フランスの娼婦の香水」と名付けました。
その後で、ヨーロッパの人からちょっとクレームが付いたので、 FWPと呼ぶことになりましたが、 これが海外のモルト通では一般的になっています。
もう普通名詞になっているんですね。
当時、日本のメーリングリストで、ちょっと話題になっていましたね。
BUSHIDOさんは、ボウモアの味が変わってしまっていたことについては、 モリソン・ボウモアに対してサンプルを送り、注意を喚起しましたが、 ボウモアの方では、品質管理・官能試験をしているが 何ら問題はないという回答を送りました。
正式見解は、インターネット・サイトで、自称モルト通があれこれ書いているが 何も根拠はない、ボウモアは何も変わっていないということになっています。
ただ、日本側のパートナーの会社の人から聞いた話では 判っているみたいですね。
S社の複数の人に確認しましたが。
S社も、人によって答えは様々ですね。
2年前に認めてくれた時には、その人の説明によれば、 ボウモアは蒸留所の近くに市民プールがあるので、 水温が上がり過ぎることがあるのではないか、 温度が高すぎることが原因であるとのことでした。
グレンギリーは、近隣で、トマト栽培をしているので、 同じ理由でないかと言っていました。
なるほど。
それで彼にオーヘントシャンの理由は、と聞いたら。
何て言いました。
う~ん、って(笑)。
ある本によれば、FWPの理由として、 バンフは、水が足りないから熱くなりすぎるとか言うのもあります。
ただ、そういう味のバンフを飲んだことはないけど。
別の人によれば、それはドライ・イーストを使っているから というのもありました。
でも、どこの蒸留所でも、ドライ・イーストを使ってますよね。
半分以上がそうだと思います。
ブルワリー・イーストを使っているところは稀少ですね。
マッカランとかの有名どころだけでしょう。
どこに行っても、セメント袋みたいのからガーってやってますよ。
このイタリア向けのボウモア8年について言えば、 輸入元がミラノのS.I.L.V.A. SRLとなっていますが、 たぶんイタリア経由ではなく、全量が直行で日本に輸入されたと思います。
横流しですか。
だから、お値打ちなんでしょうね。
さっきの謎のウイスキー(ダン・ベーガン)、 いま飲むと、ちょっとボウモアみたいに思う。
私も、最初からボウモアのように感じるんですよね。
いや、絶対に違うと思いますね。
口に含むまではボウモアのようなんですが、 その後、時間がたつほどに苦みが出てきますから。
この苦みは、ラガヴーリンの特徴だと思います。
そうですね、うん。
ところでこのボウモア8年は、12年と比べてみたいですね。
ボウモア1964と比べてみたいね(笑)。
賛成。
それでは参考にはなりません。
ええ、いま飲んで頂いたのはイタリア向けボウモア8年・40度ですが、 次に飲んで頂くのが、サントリーが今回出してきたボウモア12年です。
以前のクリア・ボトルから、今回紙ラベルに変わっています。
Ahhhh。
参考までに、今までのクリアボトルの12年も用意しましたので、 あわせて味わってみてください。
ああ、この古い12年は、香りで判る。
面白いのは、これが判って好きな人、 これが判って嫌いな人、それから全然判らない人の、 3通りいることですね。
私は、意外と大丈夫ですね。
私も、それほど苦手ではないんですけど。
たくさん口に含んで飲むと、 香水と石鹸を飲んだ感じがするでしょ。
石鹸くさいモルトって沢山あるじゃないですか。
洗面所とかの匂いのような。
例えばクレゾールみたいなっていうことですか。
クレゾールの味なら判る。
でも、僕にとっては、これはクレゾールとは違う味。
これの特徴は、舌にくっついてくるような。
彼女の首を舐めているような(笑)。
ボウモア12年って、こんなに石鹸臭かったかな。
最初に試飲したときの印象と随分変わってきている。
石鹸といっても、いろいろありますよね。
香水入りの石鹸もあれば、普通に使う石鹸もあるし、 あと真四角な洗濯石鹸もあるますよね。
これは、間違いなく洗濯用ですね。
無香料の。
印象が、随分変わっている。
去年の秋に試飲したときは、よくなったじゃないかと思ったのに。
今度の12年、どうですか。
よくなってませんか。
両方とも良いですね。あまり差が無いのではありませんか。
古い12年の方が香りが強いと思う。
比べると、古い方がやっぱり石鹸くさいですね。
それにしても、新しい方の印象の変化はなぜなんだろうか。
ちょっと落ち着いてくると、石鹸ぽくなってしまうとか。
そう言えば、確かこんなことがありましたね。
ソサエティのボウモアで、1989年蒸留、10年熟成、 度数58度くらいだったと思いましたが、 ピーティーな香りで完成度が高いものがあって、 それをサントリーの三鍋さんに奨めたことがあったんです。
彼はいつもストレートでは飲まずに、トワイス・アップ、 水だけで半分にするのですが、それを飲んだら即座に 「これ駄目。
飲んでみて」っていう訳です。
その加水したのを嗅いでみたら。
嗅いでみたら?
もろにパフュームの香り、香水の石鹸でしたね。
彼いわく、湿ったナメクジの匂いがすると。
すいませ~ん、湿ったナメクジを1杯ください(笑)。
自分にとっては、この香水もボウモアの特徴になってしまっているんですよね。
8年のボウモアもボウモアらしさだし、 自分の中にいろんなボウモアがあっても良いと思うんですよね。
古い12年もそんなに不自然なものではないと思うし。
人工的で舌にくっつくような嫌らしさを感じない? 感じないんなら、大丈夫だろうけど。
新しい方の12年の方が、あのキャンディーぽさは少なくなっていますね。
確かにそうですね。
イタリア向け8年の方が、ライトでフルーティーで、軽やかで爽やかですね。
12年の方は、ちょっとこってりしてますね。
それほどヘビーじゃないんだけれど。
どっちのボウモアの個性を取るかは難しいですね。
8年の方が、往年のボウモアのフルーティーさに繋がるとは思いますね。
それは認めます。
白葡萄のフルーティーさ。
ええ、そうです。
これであの、ボウモア特有のピート感と塩っぽさが出れば。
この8年は最初飲んだ時には軽いと思った。
けれど、だんだんと飲んでいるうちにいろんな味がして。
気楽に飲むには、これが良いですね。
今、一番、飲み得ですね。
本当に、そうですね。
これも、そろそろ店頭からは姿を消しているようですよ。
スミッソンさんは、何本押さえたんですか。
え~っと・・・3本。
3ケースの間違いじゃないんですか(笑)。
瓶を置いとく、場所がない(笑)。
ボウモアも、流れが変わりつつあることは確かですね。
HIDE麻呂さんの話によれば、バーボン樽はもう大丈夫だけれど、 シェリー樽の方はまだ残っているとのこと。
そこから考えると、シェリー・リンスの時、たとえばリフィールの時などに、 変な物が入ってしまった可能性はあるのじゃないかと思う。
それはありえますね。
シェリーといっても、ブラック・ボウモアは全然おかしいところはないでしょう?
全然、変じゃない。
でもリンスなどで変えているところがあるのかも知れない。
勘ぐって考えてしまうと、ブラックボウモアが成功したので、 あれに近い物を求めるような何かをしたのかも知れませんね。
ちょっとした何かの工夫、小細工をしてしまったりして。
それはありえますね。
ボウモアのDarkestもそんな感じしましたっけ。
こういう味しますね。
1981年軽井沢20年(武蔵屋PB)
それでは、最後のジャパニーズ・モルトに行きましょうか。
スミッソンさん曰く、これは最初に飲むな、最後にしろ ということだった1本です。
武蔵屋さんオリジナルの軽井沢20年です。
武蔵屋さんというのは、バー専門の卸酒屋さんですね。
洋酒担当に中島さんという方がいらっしゃるんですが、 彼がメルシャンの方に申し入れ、軽井沢蒸留所の製造責任者とで 一緒にテイスティングして、選ばれた一樽をボトリングしてできたものです。
シェリー樽熟成で、蒸留年は1981年です。
全部で何本ですか。
販売本数は約300本と聞いています。
実際に何本取れたかは判りませんが。
色がすごいね。
赤いですね。
まさにシェリー樽の長期熟成。
香りは、硫黄ですね。
あまりゴム臭さは感じないですね。
僕は、それがあるからちょっと苦く感じる。
私は、酸っぱい方を最初に感じますね。
サワー感というのでしょうか、 舌の先の方が収縮する感じですね。
甘渋い。
苦い。
あと甘酸っぱい感じもありますけど。
うん、そうですね。
見た目ほどはこってりしていなくて。
度数は何度ですか。
58度ですね。
そう言えば、スミッソンさんは、先日の試飲会で 随分お飲みになられていたとお見受けしましたが。
ええ(苦笑)。
これ、結構、癖になりそうですね。
方向は、フルーティーさに向かっていて、あまりヒネた味とか、 ダシっぽい味ではありませんから、MUNEさんのお好みではありませんかね。
そうですね。
あまり値段の話はしたくないんですが、 日本のウィスキーなんでちょっと割高なんです。
20年のカスク・ストレングスで、定価1万5千円ちょっとですから。
スコッチだったら、水準的にはまあ1万円前後でしょうか。
1万円だったらわかるね。
限定品で、味・香りの評価もありますし。
まあ全体で判断すべきだろうとは思いますが。
ま、そうですね。
加水したら、甘酸っぱさが無くなって、 味わいに深みが出てきているように感じます。
渋味が無くなって、飲み易くはなりますね。
ただ、苦みがあるから。
もしかしてMUNEさんの弱点は苦みですか。
ああ、見つかっちゃいましたか。
昔はラガヴーリンとか、ちょっと苦手でしたね。
今は、そうでもないですけど。
シェリー樽熟成のモルトっていうのは、 苦くないものって滅多にないじゃないですか。
だからシェリー熟成を意識して避けているところはあるかも知れませんね。
あと、おダシの効いたモルト、お好きですよね。
だったら、シェリー熟成は外せないんじゃないですか。
いや、そんなことないです。
樽の種類には関係ないと思います。
ほお、そうですか。
なるほど。
私としては、やっぱり、こっちのダン・ベーガンが気になりますね。
私は、ボウモアに一票(笑)。
第一印象を尊重、ですね。
私は、「ボウモアじゃない」に一票入れましょう。
hahahaha。
これは、やっぱりラガヴーリンでしょう。
でも、加水したら、ボウモアの香りが強まりますよ。
そうですか。
でも、現在出回っているラガヴーリン16年だって、 加水するとボウモアのニュアンスに近いものが出てくると思いますよ。
このキャンディっぽさは、何だろう。
う~ん、これはこれは・・・「わからない」に一票(笑)。
話題をちょっと前振りに戻しましょうか。
グレン・エドワーズですが、初めて飲まれたスミッソンさんの印象はいかがでしたか。
ちょっとフルーティさがあって、かなりマッシーですね。
クレイゲラヒというのも判りますが、違うものであるかも知れないです。
まあ、どこと言ってもおかしくないですね(笑)。
確かにわかんないですね。
アイラ、アイランドではないし、ローランドよりは濃いので、 スペイサイドからハイランドの個性だろうとは思います。
ただ、そこから先となると、ハッキリと判るような特徴はないかもしれません。
「ブレンデッド」と言って出されても、判らないでしょうね(笑)。
紙ラベルのボウモア12年はいかがですか。
ちょっと前のボウモアよりは、確かに良くなった。
ただ、このボウモア8年に比べてしまうとやっぱり負けてしまいますよね。
私は、こっちの個性もOKなんですけど。
これは、瓶から直接嗅ぐと、割にはっきりと香水臭がするんですよ。
それは、先日私も感じましたね。
時間が経つとピート感が出てきましたね。
新しいボウモア12年の方ですが。
最近、新しいものほど、ピート感が強まってきているようですね。
一時のボウモアは、ほとんどピート感が無くなってきていましたから。
このボウモア8年の方は、ピート感をほとんど感じませんね。
ひたすらフルーティーで。
昔のボウモア好きには堪らないと思いますが。
今日のボウモア3本は、どれも磯臭い感じはなかったですね。
そうですね。
特徴から考えると、この3本はアイラ・モルトではなくて、 ボウモアなんでしょうね。
なるほど。
この3本とブローラを出したら、ブローラの方をアイラだと思う(笑)。
明らかにそうでしょうね。
ところで、軽井沢の方は、いかがでしょうか。
ベースのモルトがすっきりとしていますね。
シェリー漬けのタムドゥーみたいな感じで(笑)。
僕は、シェリー漬けのタムドゥー好きだけど(爆笑)。
そう言えば、以前ヘルムスデールで飲んだ シェリー熟成のタムドゥーが良かった。
ソサエティの8.22(タムドゥー、83年蒸留・16年熟成)は良かったですよ。
完成度、バランスが素晴らしくて、20年熟成くらいのレベルでした。
ケイデンヘッドのタムドゥーは、ちょっと期待外れでした。
この軽井沢は予想以上にアッサリしてしまっていて。
確かにそうですね、年数と色を考えると。
今日は、テーマがいくつもありましたが、 どうもボウモア談義に花が咲いてしまったようですね。
謎のウイスキー、ダン・ベーガンについては、ちょっと霞んでしまいましたね。
謎の方は、そう簡単に結論は出ませんから。
最初、ボウモア対ラガヴーリンで2対2でしたけど、 途中でわからなくなって2対1、棄権1になってしまいましたし。
ひとつ付け加えると、イリアック、フィンラガンは相当数が出回っていますが、 このダン・ベーガンはあまり多くは流通しないようですね。
ダン・ベーガンは、今日飲んだアイラと、あとアイランドがあるけれど、 アイランドの方は、僕はとても好き。
これはタリスカーね。
タリスカーと判っているんですか。
アイランドの方はタリスカーだと言われています。
これはオフレコですが、店頭に行ってアイラとアイランドを見比べていただくと、 アイランドの方は買いだということが判ると思いますよ。
どういうことですか。
普通は同じになる、同程度になるであろうことが、そうなっていないってことです。
これ以上は、店頭で確認してみてください。
フィンラガンについては、最初に出たフィンラガンも 現在出ているものもラガヴーリンなんでしょうか。
わかりません。
それにしても何でフィンラガンなんて名前を付けるんでしょうね。
本当に紛らわしいですよね。
(笑) フィンラガンなんて言われれば、どう考えてもカリラかブナハーブンになってしまう。
最初の物は、そうだった可能性はあると思いますよ。
確か、随分前からフィンラガンは出ているでしょう。
後になって、名前が出せない蒸留所、 例えばラガヴーリンとかのものをボトリングするときに、 既にブランドとして知名度のあるフィンラガンを使った。
なるほど。
中身は変わっていった。
そして謎は深まった。
そういうこと。
バージョンは何種類もあったと思う。
3種類くらいでしたかね。
私が飲んだのは最初に出た12年、そして、今日飲んだ15年。
あとノン・エイジで40度が出回っていますね。
ノン・エイジの方は普及品クラスですから、 買ってみて飲み比べしてみてもいいかも知れません。
最初の12年・60度は、どこかのバーでストックがあればになってしまいますが。
私は、ボウモアよりもフィンラガンの方に興味があります(笑)。
ボトラーのヴィンテージ・モルト社は、これまでも随分ラガヴーリンを手がけていますし、 アイラ・モルトにネットワークはあるみたいですね。
なるほど、そうですか。
それでは総括に行きましょうか。
まずはスミッソンさん、お願いします。
やっぱり美味しいだけでいうと、ボウモア8年~。
目に入れても痛くない娘みたいですね。
ミステリー・モルトはとても面白かった。
ブラインド・テストは時々やって答えを合わせるけれど、 こっちは答えが出てこない。
それから今日のボウモアについて言えば、 ちょっと流れが変わるとはっきりと味が変化していく。
オフィシャルでもこれだけ味が変化する訳ですからね。
いろんな樽があって、いろんなボトラーがいれば、 いろんなボウモアがあっても、おかしくはない。
軽井沢について言えば、ジャパニーズモルトは、 随分前に比べてとても良くなってきている。
今日の1本もそういう1本であると思う。
以前、軽井沢蒸留所で売られていた樽出し13年、 ビンテージ81年というのがありました。
カスク・ストレングスで58度くらい、500mlのボトルに入っていたんですが、 それが正統派の濃い目のダーク・シェリー熟成の個性を持っていました。
今回、そういった濃いしっかりしたものを期待していたんですが、 逆に若々しくなっていましたね。
軽井沢。
だから軽い(笑)。
MUNEさんは、いかがですか。
ボウモアが良い方向に向かっていることは歓迎したいですね。
これからの動向に注目ってところでしょうか。
このダン・ベーガンはラガヴーリンです(笑)。
加水してみると皆さんの言われることも判るんですが、 総合的に考えればやっぱりラガヴーリンだと思います。
この軽井沢は、思った以上に軽かったですね。
私は美味しいと思いました。
Kさんは、いかがですか。
今日は、3人のモルト通に囲まれてとても勉強になりました。
以上。
それで終わりですか。
コメントをどうぞ。
それじゃ、ちょっとだけ。
今日はボウモアを3本飲んで、あとダン・ベーガンがボウモアだとすると、 都合4本のボウモアを飲んだことになるんですが、 こんなに個性の出方が様々に異なっているのかということに感心しました。
そういう多様な個性の変化があるなかで、 「謎のウイスキー」の蒸留所を当てることは、こりゃあなかなか容易ではないぞ、 というのが実感です。
スミッソンさんが言われるように、もし仮にフィンラガン3種が 全て異なる蒸留所 だったりしたら、その時には、きっとフィンラガンとかいう名前に縛られるよりも、 自分の目と鼻と舌と記憶を信じることが大切なんじゃないかと思いました。
やっぱりミステリーは、ミステリーとしておくのがよいのかなということで。
謎解きの過程、考えているプロセスがとても楽しいんですよね。
知れる機会があったら、知りたいですがね。
僕もそうです。
やっぱり、オフレコ、裏話も含めて、モルト好きでありたいってことでしょうかね(笑)。