テイスティング・ルーム第10回
東京のとあるバーに集まる男女3人。
モルト通とはまだまだいえない初心者ながら、
マスターに勧められるモルトをテイスティング、勝手なおしゃべりをしています。
話の内容については、まあ大目に見てあげてください。
今回のウイスキー
- グレンモーレンジ12年コート・ド・ボーヌ(オフィシャル)
- 1981年グレンクレイグ19年(ケイデンヘッド)
- 1978年ポートエレン22年(グレンスコマ)
登場人物
マスコミ関係の会社に勤務。おいしいものをおいしいと言える、20代の素直な女性。
通販関係の会社に勤務する30代の男性。以前は著述業を副業としていたので、表現は独創的。
いつものKさんに代わって参加。やっぱり金融関係の会社に勤務する40代の男性。
とあるバーのマスター。?代の男性。
今日はいつものKさんが仕事の都合でいらっしゃれないので、 ピンチ・ヒッターとしてK2さんに参加していただきます。
K2です。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
Tです。よろしく。
グレンモーレンジ12年コート・ド・ボーヌ(オフィシャル)
最初はグレンモーレンジの 新しいウッド・フィニッシュで、 コード・ド・ボーヌ。
インフォメーションにはどこの作り手か 書いてあったんですけど、知らない名前でしたね。
まあ、赤ワインですね、樽は。
前のコード・ド・ニュイは、 ロマネ・コンティだったんですが。
普通のグレンモーレンジとは違うんですか?。
グレンモーレンジにはウッド・フィニッシュという シリーズがあって、一番最初に出たのが、 シェリーW.F.、マデラW.F.、ポートW.F.。
それから、その後いろいろとフレンチ・オークだとか、 ブランデー・カスクだとか、ずっとシリーズを出してきたんですけど、 これが一番新しいタイプです。
だいたいが限定発売ですね。
あー、結構濃い色してますね。
そうですね。普通のグレンモーレンジと比べると、濃いですね。
年数は表示があるんですか?。
10年プラス2年です。
10年は普通のグレンモーレンジの熟成で、それから樽を移し変えて2年。
ですから、今回はブルゴーニュの赤ワインの樽を使って2年ですね。
気のせいか、ワインっぽい匂いがするような・・・。
ちょっと離れて匂いをかぐと、ワインの香りがしますよ。
ふわっと。
あまり近づくと、濃厚な香りに消えちゃいますけど。
酸っぱい匂いがしますよ。
あと何だろう、赤ワインのカビくささみたいな。
あぁ、味はかなり甘いですね。
本当に口に入れた感じはワインみたい。食感が。
タンニンの風味とかありますね。香りの割には、結構辛い。
落ち着いた感じです。パーッと広がるんじゃなくて。
ブランデーみたい。
思ったほどヘビーじゃないですね。爽やかな感じもします。
あまり変なクセはないですね。
甘辛い、上~品。
口に入れたときはアルコールの辛さ・・・辛さというか刺激ね。
後味は甘いですね。
のみきってしばらく後は、かなり渋いですね、口の奥が。
43度だから加水しないほうがいいかなあ。
ちょっとしてみましょうか。
あ、しまった。あまり残ってない。
飲みやすいですからね。クーっといってしまう。
後にそんなに残らないで、すぐまた、もう一口っていっちゃうんですよ。
香りの変化はない気がします。
ちょっと甘ったるくなったかなって気がしますけど。
甘味が出てきますね。
結構コレ甘い仕上がりだと思いますよ。
最初はアルコールがドーンときますけど。
渋みもなくなりますね。
メープル・シロップが入ってるようなコクのある甘さ。
上品な感じでいいですねー。
1981年グレンクレイグ19年(ケイデンヘッド)
お次はグレンクレイグというものなんですけど、 これはスペイサイドのグレンバーギ蒸留所で ローモンド・スティルで蒸留されたモルトです。
ローモンド・スティルというのが何物かというのを 説明しないといけませんね。
1930年代にバランタインのグレーン蒸留所が造られた時に、 一緒に造られたモルト蒸留所がありまして、 インヴァリーブンっていうんですが、 そこで研究・開発された特殊なポット・スティルが ローモンド・スティルです。
それが後に同系列のミルトンダフとか、 グレンバーギにも導入されて、 一定期間操業されてたんです。
ミルトンダフで蒸留されたモルトはモストウィー、 グレンバーギで作られたのがこのグレンクレイグ、 オリジナルのダンバートンの蒸留所で作られたのが、 そのままローモンド・モルトっていうんですが、 まあ全部1980年代に撤去されちゃって、今はもうなくなってしまっています。
このグレンクレイグはかなり珍しいです。
モストウィーは比較的出てくるんですが、 グレンクレイグはほとんどないですね、物が。
これは81年に蒸留された19年熟成、57.9度です。
変わったボトルですね。
これはケイデンヘッド。
このボトルに変わったんです。
前はあの、グリーンのボトルだったんですけど。
2000年になってからかな。
そのローモンド・スティルで蒸留されたものは、 もう全部ボトリングされちゃってるんですか?。
もともとローモンド・スティルが何のために造られたかっていうと、 ブレンド用のモルトを作るために開発された変形スティルなんですね。
温度コントロールが普通のポット・スティルよりしやすくって、 いろんなタイプのモルトが造れるというメリットがあるんです。
その当時、ハイラム・ウォーカー社がバランタインをもっていて、 非常に力をいれて自分の系列の蒸留所にどんどん設置して、 ガンガン、モルトを作ったんですけど、 ほとんどブレンド用につかっちゃってるんで世の中に出ることがなかったんです。
なるほど。
それが今になって残っていた樽を 誰かがシングル・モルトとして出してくる。
ですからオフィシャルの公式ものは一度も出てないです。
こういうケイデンヘッドみたいなボトラーが出してくるんですよ。
グレンクレイグは一度ゴードン&マクファイルから出たくらいで、 ほとんどないですね。
すっごい木の香りがする。
うん、木の香りね。
床の香りがするんですけど・・・リノリウムってんですか?。
四角いヤツ?
そう、四角いヤツ。
そう言われると、ちょっと人工的な匂いもするかな・・・。
あと、洋ナシ。
汁ッけのあるフルーツの感じですね。
コクがあるってクチじゃないですが、 甘味がそこそこあってフルーティな味わいがします。
なんかローモンド・スティルの方が普通のポット・スティルよりも オイリーで下品なモルトになるって言われてたんですけど、 そんなことはないですね。
ヘビーじゃないですね。
ええ、どちらかというと軽やかに仕上がってますね。
インヴァリーブンのモルトに比べると、もっと華やかでフルーティ。
まさにスペイサイドってモルトになってますね。
(加水してみて)
香りはカブト虫のエサっぽいや。
なんですか?、それ。
市販のヤツ。いや、食べたことはないんですけど。
甘いんだろうなあ。
広がりがある感じがします。
加水した方がちょっとピリッときますね。
酸味が強くなった気がしますね。香りはいいですね。
ちょっと度数は高いですけど、そのままの方がいいですね。
普通、珍しいモルトにおいしいものはないっていうのが通り相場なんですけど(笑)。
1978年ポートエレン22年(グレンスコマ)
では今日の3本目なんですが、 ドイツのグレンスコマっていうボトラーのもので、 ポートエレンなんて珍しくないものなんですが、 かつてイタリアのサマローリなんかが ある種伝説になってたようなもので、 そのカリスマ的存在で今もてはやされているのが、 このグレンスコマっていうボトラーなんです。
へー。
これはポートエレンの1978の22年、 2000年ボトリング。
度数は43度に加水されているはずです。
これ、シェリーじゃないですか?。
シェリーみたいですね。色合いからいって。
甘い感じ。カビっぽい匂いがする。
あー!。
ポートエレンですね。これは。
いかにも辛そうな感じがしますね。
ほこりっぽい香りなんですけど。
ポートエレンのピートの香りってそうなんですよね。
(口に入れると)
甘い!
うん、甘い。
甘い、甘い!
こんな感じのポートエレンって珍しいですね。
香りのままの味。刺激がないような・・・。
とろーっとしてますな。
全く抵抗ないですね。加水しているとはいえ。
加水しないほうがよかったんでしょうねぇ。
薄めた黒蜜みたいな。
いかにも水で薄めたって感じですね。
うん、するー。加水したって感じがするー。
後味に少し痺れがきますね。口に入れたときは、ほとんど水ですね。
飲もうとしなくても舌の向こうにすっと消えていくような感じです。
これ、ボトルで買っちゃうとあっという間になくなっちゃうでしょうね。
私はこういうの飲んでたら、途中で飽きてきちゃうと思う。
一杯、二杯をバーで飲むならいいな。
Tさんなら2日くらいでなくなっちゃうんじゃないですか?。
いや一週間くらいもたすと思う。
さらに加水してみましょうか?。
なんか想像ついて、もったいない気がしますが。
今まで結構度数の高いポートエレンも飲んできましたからね。
それに比べるとやっぱり・・・。
香りは粉っぽさが強くなってますね。水のニオイがしちゃう気がします。
あー、確かに水だ。
わははは、全然違うお酒になったみたい。
はは、やっぱり水は入れないほうがいいですね。
どんなお酒だかわかんなくなっちゃった。
加水したの出されて、何の酒だってきかれても ポートエレンとはわかんないでしょうね。
口に入れたときの舌触りが別のものになってますね。
カスクで出してたら、すごくおいしかっただろうって気がします。
でもどうなんですか?。ヨーロッパの方はカスクが多いんですか?。
あっちはあまりカスクにこだわってないみたいですね。
サマローリなんかもみんな加水してますからねえ。
自分の好みで薄くして飲む人は調整するんだから、カスクで出してほしいな。
私、やっぱりこれが一番いい。このケイデンヘッド(グレンクレイグ)。
僕もそれですね。
もっともクセのないタイプですね。
やっぱり一番モルトらしいです。
いい仕上がりですよ。
モーレンジの中では、比較的これも私は好きですね。
うん、いいですね。上品だし、飲みやすい。
自分的には料理食べながらウイスキーを飲むことって あまり考えないんですけど、 このグレンモーレンジやグレンクレイグは合うかなって。
僕の中ではグレンクレイグは食前酒って感じです。
私はなんでも食べながらモルト飲んじゃいますから・・・。
鍋でもモルト(笑)、 それにしてもこのポートエレンをカスクで飲みたいですねえ。