テイスティング・ルーム第31回
東京のとあるバーに集まる男女3人。
モルト通とはまだまだいえない初心者からセミプロまでいますが、
自分勝手なことをしゃべっているには変わりありません。
話の内容については、まあ信用できるでしょう。
なにせ呑んじゃってるんですから。
今回のウイスキー
- ダルモア ブラック・アイル(オフィシャル)
- 1993年ラーガン・ミル10年(ヴィンテージモルト社)
- 1993年アードベッグ10年(ゴードン・マクファイル)
登場人物
マスコミ関係の会社に勤務。おいしいものをおいしいと言える、20代の素直な女性。
金融関係の会社に勤務する男性。仕事がシビアな割に、舌の方の評価は優しい40代。
昼は国際派ビジネスマン、夜はバー&モルト逍遥の達人。
歯に衣着せぬコメントとおやじギャグが痛快な男性。
とあるバーのマスター。?代の男性。
今日は、Iさんが急遽都合が悪くなりまして、 欠席されるとの連絡がありました。
という訳で、男どもだけのテイスティングです。
Stag Tastingですね。(Stag=牡鹿=男だけ)
じゃ、今日はグレンフィディックのテイスティングですか?
いいえ、ダルモアを用意してありますよ。
なるほどね。
確かに(笑)。
で、今日のテーマは?。
男だけで、国内ニュー・リリースの3本を味わってみようと思います。
欠席したIさんを羨ましがらせてやろうと(笑)。
いいね。そうしよう。
ダルモア ブラック・アイル(オフィシャル)
最初の1本は、ダルモアの新しいボトル、 ブラックアイルです。
今年5月に、スコットランドに行った際、 ホワイト&マッカイ(キンダール社)に リチャード・パターソン氏を訪問しました。
その時に、彼からアイル・オブ・ジュラとダルモアについては、 今夏にデューティー・フリーショップ(免税店)向けの 新しいボトルをリリースすると聞いておりました。
ほう、それで?。
その時の話では、ジュラの方がレジェンド(伝説)と名づけられ、 ダルモアは、ブラックアイル(黒い島)という 名前になるということでした。
それが、このブラックアイルね。
(しげしげとボトルを眺める)
その黒い島っていうのは、何ですか?
土屋守さんの著作などにも時々書かれていますが、 ダルモア蒸留所の近くにある半島の名前です。
Peninsulaじゃなくて、Isleなんですね。
スコットランドは、英語のようで、英語でないところがあるから、 本当に難しいよね。
アメリカ人にはわからないよ(笑)。
インヴァネスから国道A9をダルモア蒸留所に向かって行く時に、 インヴァネスの町が面している湾に跨る大きな橋を渡って 半島に入ります。
この半島が、ブラックアイルですね。
そのブラックアイルを横切って、また橋を渡ってすこし行くと ダルモアの町に着くんですよ。
なるほどね。
ダルモアとインヴァネスの間にある大きな黒い半島か。
ダルモア蒸留所は岸辺に建っているので、蒸留所の正面には ブラックアイルが横たわってみえるんですね。
ところで、ジュラとダルモアの両方とも、日本に入ってきているんですか?。
レジェンドの方は日本では未発売のようですね。
そして、このブラックアイルも少量しか入って来ていないようで、 ファースト・リリースは、すでに完売と聞いております。
ただ、空港のデューティーフリーに行けば、両方とも置いてあるんですよね。
そうですね。
海外旅行に行かれる方に頼んで買ってきてもらえると思います。
免税店向けのリッター瓶に入ってますから、お得な感じもありますね。
後は、味しだいってことね。
で、ブラックアイルの、その味について語るためには、 まずレシピについてお話しなければなりません。
オフィシャルのダルモア12年は、シェリーカスク30%に対して、 アメリカン・ホワイト・オークが70%となっていると聞いております。
これに対して、ダルモアのシガー・モルトは、シェリー70%と アメリカン・ホワイト・オークが30%ということです。
樽の比率で個性の違いを出してきている訳だね。
で、ブラックアイルは?。
パターソン氏の話によれば、このブラックアイルはシェリーカスク50%・ アメリカン・ホワイト・オーク50%になっているとのことです。
なるほど。
割合で言えば、ほぼ中間であると。
そのブラックアイル、どんな出来になっているか。
味わってみてください。
色は、シェリー樽のきれいな赤が出ていますね。
サラリとした液体のように見えます。
アルコール度数は?。
40%ですね。
熟成年数は12年と表示されています。
考え方を変えれば、ダルモア12年のシェリー多目っていうことですね。
シガー・モルトを入れてみました、みたいな。
パターソン氏に言わせると、シガー・モルトはちょっと重いんだって。
だから、このブラックアイルを出したんだと。
でも我々は、日頃からフル・シェリーの重たいものも飲んでいますから、 それほどとも思いませんが。
樽のファースト・フィル、セカンド、サード以降の比率とかはわかりますか?。
パターソン氏の説明にはありませんでしたね。
ただ一般的に言って、蒸留所のシングル・モルト用に作られるものは、 大体ファースト・フィルかセカンド・フィルです。
サード・フィルやフォース・フィルは、初めからブレンド用に作られ、 ほとんどが集中熟成庫に送られていきますから。
(各自ノージングに入る)
切り立てだから、かなり強い刺激ですね。
革の香り。
マッカランのような、ゴムっぽい革。
ああ、確かにマッカランのようなシェリー香ですね。
火の着いていないタバコ。
ああ、吸う前の葉巻の匂いですね。
パターソン氏は、昔からダルモアに強い思い入れがあるみたいですから。
最近はジュラにも傾いてるけど(笑)。
シェリー由来なのかもしれませんが、カカオのような香りを感じますね。
ああ、そうですね。
最近出ているマッカランを甘くしたような香り。
少し葡萄の種も出てきています。
ああ、本当ですね。
エグミの方もある。
ワインの香り。
甘い方のワイン。
そろそろ飲んでみましょうか?。
色と香りに比べて、最初の印象は軽いですね。
穏やかに入ってくる。
本当ですね。
グラスゴーで飲んだときには、もう少しコッテリとした印象がありましたが。
そのときも、開けたてですか?
ええ、パターソン氏が、その場で封を切ってくれました。
あの時は、一緒にジュラの方も飲んだから、印象が変わっているのかな。
日本まで船で来ているからかも知れませんね。
ああ、そういう影響はあるでしょうね。
シェリーっていうよりも、葡萄っぽくないですか?
ああ、なるほど。
確かに味の方は、そうですね。
鼻ではシェリーっぽかったですが、口の中では葡萄ですね。
もう少しコッテリした感じがあれば、干し葡萄にチョコレートをまぶしたような 感じになるんですが。
そこまでは成りきれていないような。
葡萄は、フルーツの方?。
飲み物や果汁の方?。
そうですね・・・このサラリとした質感は、ジュースの方に近いかな。
香りで出ていたワインっぽい感じが、味わいの方にも出てきているということね。
ここにIさんが居たら、何ていいますかね?
おいしい(爆笑)。
最後に、ダルモア特有のエグっぽいところも。
ああ、出てきてますね。
何のエグみ。
焼酎っぽいとこ。
なるほど、Shochu-Finishね(笑)。
少し和菓子みたいな感じがあります。
桜餅の葉っぱみたいな。
ああ、わかる。
確かに桜餅。
桜餅はどっち。
関西風?、関東風?。
えっ、関西風って、何ですか?
小さなパンケーキをロールしたのが関東風でしょ。
で、関西風が道明寺。
ああ、僕にとっての桜餅は道明寺の方です。
そうだね。塩漬けされた桜葉の香り。
あと道明寺の感じで、粉っぽさ。
ちょっとだけ加水してみましょう。
1、2滴でしょうね。
どうですか?。
少し刺激が強くなったような。
ザワザワってしてきました。
スタンダードな大量生産のシングル・モルトは、 途中ではあまり変化しないものが多いですが、 そういったものに比較すると このブラックアイルは表情が豊かですね。
確かにそうですね。
前半はシェリーみたいで、味わいの真中はホワイト・オークで、 最後の余韻はシェリーのエグミがでてきて。
個人的には、ダルモアって、ちょっと変なところもあるんですが、 割合好きなんですよね。
パターソン氏も、その変なところに思い入れがあったりして。
そうかな?。
僕には、ある程度、自分で作れそうな味だと思うんだよね。
こういった味を出すのに、わざわざ12年以上を集めて来なくても。
マッカランやボウモアのような強烈な個性という訳ではないから、 みんなが、ああそうだよねって言えないところが辛いんでしょうね。
昔のダルモアには、良いものもあるんだけれどね。
グレープフルーツのワタの個性が出ていたりして。
ほろ苦さのある柑橘ですね。
マスターが言った、これの焼酎フィニッシュというのは、 ダルモアの個性だと思いますね。
前にダルモアを飲んだときには、焼酎というのが浮かばなかったので、 フラットで金属的で、青草のような個性と表現しましたね。
今でも、やはり葡萄の種は微かに感じますよ。
シェリー好きのIさんに飲ませたかったね。
本当ですね。
1993年ラーガン・ミル10年(ヴィンテージモルト社)
それでは、2本目に行きましょう。
ヴィンテージモルト社がクーパーズ・チョイス・シリーズで出してきた ラーガン・ミル10年です。
蒸留が1993年で、瓶詰が2003年。
アルコール度数は、57.5度です。
輸入元のスコッチモルト販売の説明では、 中身はラガヴーリンということになっています。
自分としては、名前に「ラーガン」と付く以上は、 ボウモアではないかとも想像できるので、 ここで味わってみて、もしもボウモアだったら叩き返してやろうか とも思っているのですが(笑)。
ラベルの記載には、何かヒントはあるのですか?。
アイラ島の最南端にある蒸留所のひとつであると。
そこから考えられるのは、ラガヴーリン、ラフロイグ、アードベッグですね。
樽の種類は?。
ええと、シェリー樽で5年間フィニッシュしたとなっています。
ええっ?、5年なの?。
5ヶ月の間違いでは?。
いいえ、ここに確かに5年と書いてあります。
ああ、本当だ。
5年間のシェリーフィニッシュ、謎のアイラカスクを味わってみてください。
本籍地アイラ、現住所シェリーのIさんに飲ませたかったよね。
うんうん、本当に。
仕事とは言え、本当に残念ですよね。
色はゴールド。
シェリーっぽい赤みは出ていないですね。
泡の上がり方を見ても、液体自体はかなりオイリーですね。
(各自、ノージングに移って)
ああ、間違いなく、これはラガヴーリンですね。
うんうん、確かに。
歯医者の消毒の香り。
スモーキーで。
ボウモアではないね。
普通ネーミングだけだったら、Lagganだから、ラーガン川で、 ボウモア蒸留所だと連想しますよね。
この間エイコーンから出たラーガン・リヴァーは、ボウモアだったからね。
ボウモアの仕込水はラーガン川だから、ラーガン・リヴァー=ボウモアは 正しいわけですが。
他にも、Lagganという地名があるんでしょうかね。
以前にFinlagganにも騙されたことがありましたから、 今回も単なる目くらましかも知れませんよ。
ラーガン・ミルというネーミングで、ラガヴーリンとの関連性を追及していくと、 ラーガンではなくて、ミルの方になるのでしょうね。
えっ、ミルって、工場という意味だけじゃないんですか?。
ラガヴーリン蒸留所のオーナーが、20世紀の初頭に、 元々有ったラガヴーリン蒸留所の横に、モルト・ミル蒸留所を開設しているんです。
ああ、モルト・ミルですか。
モルト・ミル蒸留所は、半世紀以上に亘って稼動しましたが、 1960年代に入ってラガヴーリン蒸留所に統合・集約されました。
その当時にあったモルト・ミル蒸留所のポッチスチルは、 ラガヴーリン蒸留所に移設されている。
なるほど。
ラガヴーリン蒸留所にある、玉葱型のポットスチルは モルト・ミルから移設されたものです。
味わってみましょうか?。
確認してみましょう。
まとわり付くような感じですね。
甘くて、オイリー。
かなりまったりとしてますね。
口のなかに刺激も来ますね。
口の中に刺激が来て、スモーキーさが残る。
典型的な味スモ。
だけど、シェリーっぽくはないですね。
本当ですね。
僕にとっては土っぽい感じがあって、それがシェリー由来のものだと思うね。
何空きのシェリーかと思うけど。
僕にとっては、典型的なラガヴーリンで感じる段ボール。
ああ、段ボールあるね。
わかる。
香りをおさらいすると、どうなる?。
僕が感じたのは、煙、タール、スモークハム。
あと、歯医者さんの消毒液。
病院の消毒じゃなくて、歯医者さんですね。
そうですね。
仮の詰め物を、歯に入れた時に塗るような消毒液の香りです。
ああ、なるほどね。
ちょっと加水してみましょう。
いかがですか?。
Sさんが指摘された土っぽさが出てきますね。
この状態だと口に入れた時の方が、ラガヴーリンらしさが 出ているように思いますね。
より強く感じますよね。
後から来るピートが凄く強い。
鼻に抜けるような感じがありますね。
ちょっとクローブっぽくなる。
口の中の残りが強力ですね。
色からは、ちょっと想像ができないくらいに。
これだけ強いとチェーン・ドリンクは難しそうかも。
Iさんなら、何て言うかな?。
強いピートがとても美味しいです。
もうメロメロですうって(笑)。
ハッハッハ。
でも、飲む人によって評価が分かれそうですね。
僕は、結構好きな方ですけど。
私も好きですね。
やっぱりラガヴーリンはこうでないとね。
バランスもいいですね。
アフターのパワフルさは、グイグイと来ますよね。
クーパーズ・チョイスというと、樽職人の選んだっていう名前なんで、 シングル・カスク、ノンチル、無加水というイメージがありますけど。
これは、偶々そうなっていますが、必ずしも統一した ポリシーでもないみたいですよ。
加水46度っていうのもあるし。
まあ、良い樽を選んでいるというくらいの意味でしょうね。
実は、ビンテージモルト社のバイヤーはクーパーさんと言って…(笑)。
Iさんが居たら、マジ顔で「本当ですか」って聞くだろうね(爆笑)。
お値段もそれほど高くないし、良い出来ですね。
Very Goodでした。
1993年アードベッグ10年(ゴードン・マクファイル)
それでは、今日の3本目に行くことにしましょう。
スピリット・オブ・スコットランドのアードベッグ第3弾ですね。
前の2本はシェリー・カスクだったんですが、 今回のはリフィールのアメリカン・ ホッグスヘッドです。
蒸留は1993年の、 熟成年数は10年となっています。
前の2本は、どちらも良い出来でしたね。
アルコール度数は?。
54.7度ですね。
ナチュラル・カスクで、ホッグヘッドですから、 295本が瓶詰めされています。
このシリーズのボトラーは、 確かゴードン&マクファイルの関連会社でしたね。
そうです。
スペイモルト・ウィスキー社ですね。
そして、その全量をジャパン・インポートシステムが 日本に持ってきています。
日本に居て、本当によかった。
前の2本のスピリット・オブ・スコットランドと比較して、 樽の違いはどのように出てくるのか。
そのあたりを思い出しながら、テイスティングしてみることにしましょう。
色は、前のものに比べると薄いですね。
そうですね。
琥珀より薄い。
ゴールドくらいかな。
まず最初に、甘い香りですね。
確かに。
クリームケーキみたいな甘さ。
エドラダワーをピーティーにしたような。
いやあ、私もエドラダワーを感じていたんですが、 テイスティング向きじゃないかなと控えておりました。
ショートケーキの生クリームの甘さ。
あるいは、ラガヴーリンを飲んで、Geをした赤ちゃん。(マスター、苦笑)
確かに乳酸ぽさはありますね。
エドラダワーの個性は2つ。
石鹸ぽさと赤ちゃんのGe。
で、このアードベッグは、後ろの方の特徴が出ている。
Sさんが90年代のアードベッグで指摘しておられる、 あの乳酸系の個性がこれにも出ていますね。
はい、そうです。
古樽に由来するものと思われる乳酸っぽさ。
度数54.7度だから、年数の割にアルコールはそれほど高くないんでよね。
古い樽自体の香りも微かにする。
ああ、確かにあるかも。
古樽の枯れた印象として。
それにしても、この生クリーム、甘いわ。
ただ、紛れもなくアードベッグの個性も持っているんですよね。
カビ臭いような酵母。
それは、ちょっと感じられないですね。
最近のもので感じるものですか?。
いいえ、昔のアードベッグからある個性なんです。
アードベッグ蒸留所のキルンで感じる香り、 ちょっとかび臭いような個性が味わいとして口に出てくる。
時々饐えた感じが出ますよね。
多分ピート由来のものだと思うんですが、アードベッグでしか感じないんですよね。
ああ、なるほどね。
今日のものでは、匂いには感じないの?
そうですね。
最初は口の方から出てきましたね。
アードベッグ蒸留所のオールド・キルン・レストランに入ると同じ香りがするんですよ。
さきほどピート由来と言いましたが、昔のモルトで使われたピートと、 このモルトに使われたピートは全く違うということもあると思います。
このモルトでは、おそらくポートエレン・モルティングのピーテッド麦芽を使っていると 考えられますから。
今日のアードベッグでは、饐えたピートが香りには出てきませんね。
そうなんですよ。
口に入れると出てくる。
70年代以前に蒸留されたアードベッグでは、トップの香りから 出てくるものが多かったですが。
もちろんその個性が味わいにも続いていくんですが。
これは、ラガヴーリンにもラフロイグにも出て来ない。
アードベッグだけのものです。
僕の感じるオールド・ウッドと、かび臭さとは別の物?。
ううん、難しいですね。
古樽ではないけれど、オールド・ウッドではあると思います。
アードベッグ蒸留所のオールド・キルン・レストランに行けば 実感していただけると思います。
あそこは、壁には新しいものが貼られていますが、天井材は麦芽を ピートで焚いていた頃の木材がそのまま使われています。
その焚き染められたピーテッド・ウッドに感じる饐えたカビの香りということです。
なるほど。
あとは、シナモン・ステッィクを舐めているような、 シャープなところが出てきました。
ここまで来ると、トップの甘さはなくなりましたね。
ああ、そうですね。
最初に香りを嗅いだ時には、生クリームのショートケーキを 鼻の中に突っ込んだかと思いました(笑)。
最後は、シャープになって、ビリビリしてきたかな。
古樽使用の物は最後になると、苦さが出てきてしまうものも多いよね。
90年代の初頭は、スコットランドの蒸留所はあまり景気が好くなかったので、 良い樽を使いたくても使えない時期だったみたいね。
スプリングバンクでも、あまりにも樽の質が落ちた時期だったようで、 フランク・マクハーディ氏が樽の品質を変えるように努力されたという話を聞きました。
あの頃は、どこも景気が好くないので、新しい樽が買えない。
それでも生産はしなければならなかった。
だから空いている樽があれば、何でも良いから入れてしまえとなっていたんでしょうね。
アードベッグの樽が本当に良くなっていくのは、グレンモーレンジが買収した 1997年以降でしょうね。
なるほどね。
二日めに飲むと、だんだんエドラダワーみたいになってくるから、 個人的には、今日の状態の方が良いと思いますね。
Iさんが居たら何ていうかな?。
美味しいですう。
生クリームの甘さがいいです。
ピーティーで、甘いからね。
Iさんのお気に入りでしょうね。
それでは、まとめに行きましょうか? Iさんが居ないので、Kさんから。
はい。
今日のニュー・リリース3本ですが、 ええっと、ボトル自体の手に入り難さに注目すると、 アードベッグとラーガン・ミルに注目したいですね。
ダルモアのブラックアイルは、シェリーとホワイトオークの混合比率の話とか、 インヴァネスからの道筋の話とか、それなりにエピソードはあるし、 味的にみても、普及品としての個性としては、表情豊かなんだけれども、 やはり後の2本には太刀打ちできない感じがする。
後の2本では、どっちがいいの?。
ラーガン・ミルが飛びぬけて良いと思います。
最初の歯医者さんの香り、口に入れると甘くて、オイリー。
でも、途中からはピートが出てきて。
しかもパワフルさは最後まであって、余韻も長くて。
Iさんなら、メロメロになりそうって言ったけど、僕も結構メロメロかも知れないです。
メロメロね。
アードベッグは饐えた香りの感じはあるんですが、酸味のある乳酸っぽさ、 これと甘さのバランスが今一つだったように思います。
後は年数なりの熟成感であって、余韻もそれほど長くなかった。
Sさん指摘の古樽使用によるものだとしたら、残念としか言いようがないわけですが。
それではSさん、お願いします。
今日のダルモアに関しては、最近のマッカランに近いような印象を持っていますね。
深みや厚みはあまりなくて、ゴムっぽいシェリーの癖があって。
さっき誰でも作れるって言ったのは、言い過ぎかも知れないけれど、 人工的な個性があることは否定できない。
我々は、普段からヘビーなフルシェリーなものとかも飲んでしまってますからね。
確かにそうですよね。
シガー・モルトよりも濃いから(笑)。
そうですね。
確かにダルモアのブラックアイルを、 他の2本とは比較してはいけないかも知れないですね。
このブラックアイルは、ブレンダーの力量によるところも大きいですし。
個性というと、物足りない感じがある。
でも、飲み飽きるようなことは少ない。
アードベッグについては、ちょっと気になる点はあるけれども、 今日の出来はそれほどは悪くないと思いました。
最後に僕の好きなシナモン・スティックも出てきたし。
気になる点というのは?。
さっきも言ったけれど、封開けから時間が経つに連れて、 エドラダワーみたいな癖、赤ちゃんのGeが強くなっていくところ。
だんだんバランスが崩れていくところだね。
Iさんだったら、こういうだろうね。
「美味しいです。エドラダワーみたいな甘酸っぱい甘さがある」って(笑)。
ラーガン・ミルは、美味しいです。
Very Good。
ラガヴーリンを濃くした印象を持ちながら、表情が豊か。
段ボール、ピート、タール、歯医者。
とても楽しめましたね。
最初にオイリーさを感じるモルトは途中から、 くどくなって来るものが多いように思いますが、 これには、そういったしつこさは感じないですよね。
モルトの持つパワーや変化が楽しめて、オイリーさを最後まで不快には感じなかった。
そうですね。
後の余韻に向けて、ワーって広がってくるんだけれど。
つい、もう一杯行っちゃいますよね。
そうそう。
勢いに乗ると、ちょっと怖い感じ。
Iさんが今日ラーガン・ミルを飲めなかったのは、彼女にとっても 大きな損失だと思いますね。
本当だよね。
ところで彼女は、もともとピート好きなの?
彼女は、昔からアイラピート好きですね。
最近は、シェリーの魅力にも取り付かれているんですよ。
たぶん、今はピートとシェリーで半々くらいですね。
配合比率ではね。
なるほどね。
昔はシガーモルトだったけれど、今はブラックアイルなんだ(笑)。
うまいですね。
(*注)皆さんの評価の高いラーガン・ミルですが、残念ながら、この回のUP前に、 天使によって最後の一滴まで召還されてしまいました。