テイスティング・ルーム第28回
東京のとあるバーに集まる男女3人。
モルト通とはまだまだいえない初心者からセミプロまでいますが、
自分勝手なことをしゃべっているには変わりありません。
話の内容については、まあ信用できるでしょう。
なにせ呑んじゃってるんですから。
今回のウイスキー
- グレンモーレンジ18年(オフィシャル)
- 1991年余市12年(オフィシャル)
- 1990年カリラ12年(ウィスキー・エクスチェンジ)
登場人物
マスコミ関係の会社に勤務。おいしいものをおいしいと言える、20代の素直な女性。
金融関係の会社に勤務する男性。仕事がシビアな割に、舌の方の評価は優しい40代。
金融関係の会社に勤務する男性。
仕事がシビアな割に、舌の方の評価は優しい40代。
とあるバーのマスター。?代の男性。
グレンモーレンジ18年(オフィシャル)
それでは、始めましょうか。
今日最初のボトルは、 グレンモーレンジが出してきた1本です。
熟成年数は18年となっていますが、 これの特筆すべき点は ホワイトラム・ウッドフィニッシュであることです。
どれ、どれ?ああ、本当ですね。
トリニダード産のSuperior White Rum と書いてあります。
アルコール度数は46度ですね。
そこで、素朴な疑問に突き当たるんです。
そもそもホワイトラムっていうのは、 樽に入れて熟成するのかと。
ダークラムやゴールドラムに色が付いてくるのは、 熟成樽の成分が溶け出してくるからですよね。
ホワイトラムというのは、蒸留されて樽に入れずにタンクから 移されていくから、無色透明なのではないかと。
そもそも樽熟成されていないものだと思っていたんですが。
スピリットから落ち着かせるために、樽に入れることがないとは 言いきれないかもね。
多少の時間は樽に入れるのだろうということなんでしょうね。
そうでなければ、こういうモルト自体がありえなくなってしまう。
すいません。
わたし、ラム自体をそんなに飲んだことがないんですが、 色の付いているものもあるんですか? (Iさん以外、コケる)
ええ、カクテルには、ホワイトラムが使われることが多いですが、 樽熟成して、濃い色の付いたものをダークラム、 中間の色のものをゴールドラムと呼んでいます。
ダークラムは、ストレートで飲んだり、 少し水だけを足して飲むとなかなか楽しめるよ。
モルトウイスキーと同じように。
そうですね。
出来の良い物も割とありますし。
へえ。
(注)ラム 色による分類
ゴールド→樽熟した色調、風味がそのまま生かされています。
ホワイト→樽貯蔵の後、活性炭処理を行い、無色透明のすっきりした味に仕上げられている。シルバーともいいます。
「サントリー(株)ホームページ お酒大辞典より」
グレンモーレンジのウッドフィニッシュ・シリーズは、 熟成年数も長いものから短いものまで様々ですが、これは18年です。
短い方では10年から12年くらいだったかなという記憶があります。
個人的な趣味の関係も多少はあると思いますが、 僕的には、このシリーズは高く評価できるものと そうではないものとのバラ付きが多いんです。
まさに実験的ですよね。
まあ当たり外れが大きいというか。
そのホワイトラム・ウッドフィニッシュが、 いかなるものかを味わってみることにしましょう。
色は、年数の割に浅い色ですね。
ゴールドに近い。
ああ、ラムの香り。
本当だ。
立ち上ってくるね、ラムの香り。
私、やっぱりラムの香りって、わからないかも知れないです。
すいませ~ん。
ホワイトラムをください。
グレンモーレンジが使いそうなやつ。
かなり鼻への刺激が強い。
Dustyですね。
あとヴァニラ香を感じる。
ホワイトオークの樽の個性。
ああ、本当だ。
ヴァニラの香りします。
確かに。
香りの刺激・印象はとても強い。
ちょっとこのホワイトラムと比べてみて、どうですか?
(ショットグラスを差し出しながら)
そうですね、共通している部分あります。
香りの個性そのものは、一緒みたい。
ラムって、こんなに爽やかだったんだ。
もしかしてストレートでは飲んだことないの?
ええ、生まれて初めてです。
カクテルでは飲んでますけど。
西麻布にタピアというバーがあります。
メインは、マルティニークのラムですが、ここのラムのストックはすごい。
女性のバーテンダーが二人でやっていて、なかなか流行ってますよ。
へえ。一度、行ってみます。
その前に、うちで予習していってからね。
はい(笑)。
香りの変化は少ないみたいですね。
味の方はいかがでしょうか?
最初に感じるのは、糖蜜の甘さ。
その後から、ラムやスピリッツに感じるドライな印象。
あと、ちょっと粉っぽい感じの口残り。
後味に、喉にグっと来るものがあります。
不快なものではなくて、どちらかと言えば、心地よい感じで。
フィニッシュには、かなりタンニンっぽいところがある。
ああ、タンニンね。
確かに。
最初の甘さと、後からのタンニン。
タンニンも感じますけど、僕は、粉薬の苦さを感じますね。
そうね。
舌触りとかに。
最初は、どう感じた?
最初は、砂糖きび、糖蜜の甘さかな。
今、口に入れるとトロピカルフルーツみたいな感じもある。
僕には、この甘さは少しくどい感じがある。
実は、私も始めから南の果物みたいな甘さを感じてました。
何のフルーツ?
比較的さっぱりした果物。
時間がたつに連れて濃くなってきてますが。
最初にさっぱりした甘さ。
それが、次第に重なって厚さを増してくる。
そうそう、そしてタンニンの苦さが加わって。
それに、粉薬のザラザラ感が余韻として続く。
今、乳酸を感じてしまった。
ああ、確かに。
最後に、少しね。
ええっ?
わかりません。
これは感じたくなかった。
あんまり好きじゃないから。
そうなの?。
ちょっとあると味の変化として面白い時もある。
この間のエドラダワーのときも、乳酸の甘酸っぱさが良かった。
甘くて、酸味があって、ミルキーで。
赤ちゃんのGe、初恋の味。
いやな初恋だな、そりゃ(笑)。
ミルキーっていうのは、私にはアイスクリームみたいに感じられます。
飲みやすい。
なるほど。
ウッドフィニッシュ・シリーズのグレンモーレンジのなかでは、 今日のこのホワイトラムは軽い印象ですね。
そうですね。
おいしいわ、このバニラアイス。
モーレンジ自体の持っている個性っていうと、 ちょっとわからなくなってくる。
確かにそうですね。
さっきからずっと何のフルーツかを考えていたんですが、 これってトロピカルフルーツっていうより、甘さの強い柑橘、 例えばポンカンとかじゃないかなって思うんですが。
ああ、そうですね。
爽やかさがあるんです。
でも、次第に強さを増してくるんですが。
それに、バニラアイスをまぶしてください(笑)。
そうそう。
甘さの質、ベクトルの向きは違うんだけど、 このグラスのなかでクロスオーバーしている。
飲むにつけ味が濃くなっていくんですけど。
タンニンがどんどん蓄積されてくる感じがあって。
昨年年末の、S社のFさんの話を思い出してしまいました。
ああ、12月のジュラの話ね。
ピーティな個性を高めるのに、何度も蒸留繰り返して、溜めていくという。
そうです、そうです。
ちょっと加水してみます。
ちょっと勿体無いかも。
ああ、ホワイトラムになってしまった。
単調な感じ。
タンニンは少し強くなってきています。
渋皮みたいな癖。
前半とは違う飲み物になってしまっている。
十分にウッドフィニッシュの効果は出ているんだろうとは思いますね。
最初の「そもそも論」に戻るんだけれど、 ホワイトラムが樽で熟成されているというのが、腑に落ちないんですが。
こういう風な仮説は成り立ちませんか?。
ラムの熟成を目的にしたのではなく、樽にホワイトラムの成分を移すために、 いったん、何かの樽に蒸留仕立てのラムを入れて貯蔵した。
当然、ゴールドラムになる前に、詰められていたラムは抜き出され、 そこにグレンモーレンジが詰められた。
なるほど、このホワイトラム・ウッドフィニッシュを作るための、 ホワイトラム樽をわざわざ作ったと。
まあ、樽談義は多くの場合、真相は藪のなかですけど。
Bush Wood Finishね(笑)。
いろいろと変化はありますが、ホワイトラムの個性は、 最初から最後までKey Noteになっていますね。
途中に苦さは出るけど、最後もやはり甘い。
こういったクドイ甘さは、個人的にはあまり好きではないね。
口直しに次に行きましょう。
私は、甘くて、美味しいと思います。(きっぱり)
まあまあ、お二人ともご意見はあるとは思いますが。
1991年余市12年(オフィシャル)
それでは、二本目に行きましょう。
毎度お馴染み、余市シングル・カスクの ニューリリースからです。
余市12年、蒸留年は1991年です。
樽番号は何番ですか?
えっと。129412ですね。
これが出る3週間くらい前にリリースされた 同じく1991年蒸留の余市12年は購入しました。
今年から発売されている91年蒸留の12年熟成は、 割合お値打ち感があるんですよね。
そうですね。
13年熟成になると価格帯が 一段跳ね上がりますから。
余市シングル・カスク10年と同じというのも お得な感じがします。
コストパフォーマンスの点では。
アルコール度数は?
かなり高めでして64.9度です。
熟成年数からみてお値打ちとも言える余市12年、 出来のほうはいかがでしょうか?。
色の方はしっかりと出ていますね。
ああ、良い香り。
消毒の香り。
僕は、消毒とGe(笑)。
え~っと・・・ああ、確かにGeの感じ、するよ。
誰かがGeしたんで、マスターが消毒したみたいな。
あんまり衛生的な話じゃないね。
後は、鰹だし。
ああ出てますね。鰹だし。
余市のシングル・カスクにはよく出てくる特徴だね。
前に出た91年も、素晴らしい鰹だしが出ていた。
その後で、松林が追いかけてきた。
うん、そうでした。
松林で、鰹だしのうどんか何かを食べていたら、 前の日の二日酔いが残っていて、Ge(笑)。
今日は、それを消毒して。
ちょっとお下品です。
悪乗り。
アメリカには、パイン・ソールっていう、松から取った消毒薬がある。
それの香りだね。
味は、いかがですか?
びっくり!、美味しいです、これ。
素晴らしい。
この間の余市91年に似ている印象。
鰹だしの旨みと鉛筆の削りカス、良いWood。
そして最後に塩。
余市シングル・カスクは、新樽のウッディな良い個性が出ていますよね。
ピートと甘さと重さが良い具合にバランスしてますね。
確かにバランスが素晴らしい。
口に入れた瞬間は、度数が高いだけに少しウっと来ますけど。
僕は全然大丈夫。
免疫が出来ているから。
本当に美味しいです。
蜂蜜のような凝縮した甘味を感じます。
私、子供のときから蜂蜜を舐めるのが大好きなんです。
これは確かに甘いですね。
最後は、塩っぽくて中和されてくるけど。
そうですね。
これ、おいしい。
甘ったるくなっていないし。
甘いんだけれど、先程のモーレンジのように残らないですね。
ああ確かに残らない。
甘さの内容が違いますね。
ピーティーで、うまくて甘くて、重いんだけれど、 変に引きずることがなくて、しばらくたつと無くなっていく。
最後は塩がキリリと締めてくれる。
それぞれの味わいが立ち去った後には、アルコール感がホワホワンと 自分の周りを取り巻いてくれているような感じ。
うんうん、そう。
なかなか良い出来ですね。
本当に美味しい。
デザート・ウイスキーみたい。
香りは多彩だよね。
メロンの完熟とか。
鉛筆の削りカス、やぱりGeも。
本当に美味しいGeですね、これ(笑)。
そういうところがモルトの面白いところ。
僕は時々、馬糞のように美味しいと表現することがある。
香りは、馬糞でもGeでも、味わえば美味しいものは沢山ある。
そして、そのような香りのクセが、素晴らしい調味料になったりする。
実際に、そのものを食べているわけではない。
あくまでも見立ての世界だからいいわけで。
例えば、アオカビのチーズだって、味を表現しようとすれば、 結構厳しいものになるかも知れないよね。
はい、そうですね。
最近、美味しいモルトを飲んでいて、 周りから鼻を刺激する匂いが漂ってくることがある。
あ、誰かやったな?と思って振り返ると、バーテンダーがチーズを切っていたりする。
チーズを切るんだったら、奥のキッチンでやってほしいよね。
ああ、なるほど。
ノージングしている時にも、周りの匂いがすごく気になることがある。
味の方について言えば、美味しいんだけど、いつもの味っていう感じがする。
意地悪な言い方をすると、ワンパターンかなっていうような。
型にはまっているという意味ですか?
ええ。
なるほど。でも、美味しいから僕は許せる。
この間、Sさんが仰っておられたみたいに、余市というのはスコッチ・モルトと バーボン・ウイスキーの中間に位置するんだなあとつくづく感じますね。
ハッハッハ。
確かにそうですね。
僕は、余市に出会って初めてバーボンを美味しいと感じることが 出来るようになりました。
Sさんが、選んでバーボンを飲むんですか?。
この間の、ウイスキー・マガジンのBest of Bestで、テイスティングした時に バーボン・ウイスキーを飲んでも、まずいとは思わなかった。
つけた点数もバーボンの方が、ブレンデッドよりも高くなっていた。
へえ、そうなんですか。
これもジャパニーズ・ウイスキーのお陰。
私は、個人的には、型にはまった余市よりは、 モーレンジの方が面白いように思いますね。
どっちが美味しいの?
美味しいか、美味しくないかと言われると困っちゃうんですけどね。
僕は、絶対に余市の方。
余市の個性で他に似ているものがあることはわかるけど。
この新樽の個性は好きな味だから、これでよい。(キッパリと断言)
ジャパニーズ・ウイスキーの個性ということでは、 新樽の余市とリフィール多用の山崎とでは、対極にあるといえますね。
山崎の方が、多彩な表情のものが出てきますよね。
そういう意味では、私は、山崎の方が好きなものが多いですね。
山崎は、同じボトルでも味が変わったりする。
素晴らしいと感じるときと、まあまあと思うときがあったりして。
ちょっと加水してみますね。
どうですか?
硬さが取れて広がってくる。
甘さが前に出て、フルーティな個性が出てきた。
少しGeも戻ってきた。
ああ、甘い。
カナダのデザートワインみたいです。
最後の塩の引き締め感は無くなってしまう。
どっちがいいかは、趣味の問題だと思うけど。
とっても美味しいので、わたし的には要チェックの1本です。
個人的には、もう少しフィニッシュに力強さと長さがあると良いんですけど。
1990年カリラ12年(ウィスキー・エクスチェンジ)
それでは、今日最後の1本に行きましょうか。
ウイスキー・エクスチェンジが出してきた カリラ12年です。
ヴィンテージは1990年ですね。
アルコール度数は何度ですか?
58.8度です。
ところでウイスキー・エクスチェンジと言えば、 社長がSさんのお友達でしたよね?
シンさんね。
ターバンを巻いている。
えっ、ターバンですか?。
彼はインド出身なんです。
彼の両親がロンドンの郊外でネストという酒屋を経営してまして、 それをきっかけに、彼自身はまずミニチュアボトルのコレクターとして 有名になり、その後レアボトルを集めるようになりました。
彼のビジネスは、最初両親の酒屋の一角で、レアボトルや オールドボトルを商うことから始まりましたが、 次第にネット販売のウェイトが高くなっていき、酒屋のネストの方は手放して、 今のウイスキー・エクスチェンジという会社を興しました。
Sさん、ちょっと質問してもいいですか? このラベルの表記は、CがXで、LがAになっているんでしょうか?
その辺の事情は聞いてますか?
そんなこと知るもんか(笑)。
と言うか、これは多分ギリシャ語の表記にしたんでしょう。
ウイスキー・エクスチェンジは、 以前にもこういう表記にしたことがあるんですか?
全く無いです。
これだけです。
ウイスキー・エクスチェンジのラベルにしてはシンプルですよね。
そうですね。
ウイスキー・エクスチェンジのシンさんが選ぶモルト・ウイスキーは ロクでもないという評価、噂も一部にはあるようですが。
オフレコにしておいてくださいね(笑)。
最近のリリースでは、このカリラとグリーン・ブラックラは美味しいけれど、 それ以外には、総じて苦さの強い、クセのあるものが多いですね。
すいません、グリーン・ブラックラって何ですか?
ロイヤル・ブラックラなんですが、液面が緑がかっているんです。
ロクでもないもので大丈夫なんでしょうか?
彼は、ダークシェリーの濃いモルトが好きですね。
あと、香水系のものも気にならないみたいだから。
そういった根強いファンはいるわけですね。
カリラに外れなし、という言葉もありますから。
これは大丈夫です。
誰の言葉?
僕の言葉(笑)。
そう言えば、カリラで一本だけ、変なのを飲んだことがあります。
イタリアの有名なコレクターがボトリングしたカリラなんだけど。
なんだけど?
生まれて初めてだってけど。
石鹸のカリラ。
石鹸?。
そりゃ珍しい。
ほんとに変なカリラ。
1本持っているから、このテイスティング・ルームの100回めで ボトル開けてみましょうか(笑)。
先は長そうですけど、楽しみにしてます。
私は、そんなには待てませ~ん。
香りはいかがですか?
ああ、カリラ特有の香り。
ドライで、ウッディで少しタールが掛かっている。
少し甘酸っぱいGeを感じてしまった。
なるほど、甘い乳酸の香り。
古い樽で熟成された時に出てくる特徴ですね。
樽がThird Fillとか、Fourth Fillになってくる場合の。
ただピートが強いから、バランスが取れているように感じられる。
甘酸っぱくて、ピーティーで心地良い香りですね。
しばらくノージングだけでもいいかも。
香りが少し変わってきた。
タールと甘草(カンゾウ)の中間。 前に飲んだ時よりも、今日の方が甘いように思います。
カラメルの香りも出てきました。
甘い。
カリラって、もっと辛口だと思っていた。
香りと同じような印象ですね。
ああ、本当に甘い。
甘くてピーティー。
想像していた以上に甘かった。
それでもタールはしっかりと出ていて、カリラらしさもある。
前に飲んだ時よりも、今日の方が甘いように思います。
カリラのなかでは、かなり甘い方だと思うね。
フィニッシュにはタールの余韻があって、スムーズな甘さが残る。
カリラのイメージとして、ドライでウッディというのがあるけれど、 このカリラは、割に甘いですよね。
変な言い方だけれど、Dry & Sweet。
ウッディな辛さの上に甘さが被さっている。
本当に甘いですよね。
カリラの持つ薬品臭さはほとんど感じないし。
タールとWoodはしっかり感じるけど。
最近Sさんが飲まれたカリラのなかで、お奨めはありますか?
恵比寿のサザーランドで飲んだ、サマローリがボトリングした カリラ1968年は素晴らしかった。
洗練されていて、タールの味よりもリコリス(甘草、カンゾウ) の爽やかな味わいが前面に出ていた。
1968年頃というと、蒸留所の建替前ですから、 味わいは全然違いますよね。
建替えしたのは何時頃ですか?
前の蒸留所での最後のヴィンテージが1971年ですね。
1972年から74年に掛けて建築・移設工事が行われて、 新蒸留所での最初の蒸留年が1974年だったと思います。
ラベルの絵柄になっているキルンのあるカリラは、建替前の建物です。
今はどうなっているんですか?
今はガラス張りの美しいビルディングです。
蒸留室からは硝子越しに、Paps of Juraが見える。
Iさん、Papsって何か知ってる?
わからないです。
ジュラ島の何ですか?
おっぱい(笑)。
ふたこぶの山があるんです。
なるほど。
Papですね。
憶えておきます。
Kさん、加水するとどうですか?
ちょっと勿体ない感じはしますね。
ええっと、あまり印象は変わってこないですね。
思ったほどパワーが落ちないし。
本当ですね。
一般的なカリラの印象と比較すると、このカリラは随分ウェットですね。
僕は、Wet & Sweetに感じる。
ただ、ウッディさの中にドライな部分もある。
なるほど。
今日は、どれも甘かったね。
確かに、総じて甘かった。
ああ、最初に言うのを忘れてました。
今日は、最近出てきた甘いモルト特集です。
ええ?、何やら後講釈のような?。
それって結果論じゃないんですか?
いや、そんなことはないです。
言おうと思っていて忘れてただけ。
甘いモルト、どれも美味しかった。(にっこり)
Iさん、うまくまとめますね。
ま、それはそれとして、総括に行きましょうか? Iさんは、いかがでしたか?
今日の3本のなかでは、余市に魅了されました。
今日の一番です。
この甘さは、女性の好む甘さ、喩えればデザートの甘さだと思います。
二番目がグレンモーレンジかな。
えっ、カリラが3番目なの?。
もう完全にアイラ・モルトの世界から離れてしまった感じだね。
ああ、本当ですね。
言われるまで気付きませんでした。
グレンモーレンジは香りが非常に爽やかで、ラムらしい甘さがあって、 次第にバニラアイスの甘さが出てきて、最後に柑橘系のキャンデーみたいで 面白かったと思います。
カリラは、煙たくて甘いところが良かったと思います。
美味しかったんですが。
それにしても、どうしてカリラが三番目なんでしょう? いつのまにかアイラ離れしてしまったんでしょうか?(笑)。
Kさんは、いかがですか?
今日の3本の共通項は甘さだったんですが、その甘さの出方という点で、 それぞれに驚き、意外性があったように思います。
そのなかで、比較的、想定された枠内に近かったのは余市ですね。
いつもの松、鰹の旨みのうえに、樽由来の甘酸っぱい乳酸が顔を出していました。
うまく絡み合っているように思います。
グレンモーレンジは、こんなラムの爽やかな甘さを個性として持っているモルトが 出来るんだという点が驚きでした。
ホワイトラムらしい個性の背後から、粉っぽさ、タンニンっぽい苦さが 沸き上がってきて、それもまた面白かった。
最後のカリラは、普通であれば、ピーティでタールの味がするところが、 このボトルはとても甘い印象が、香りにも味わいにも出てきていた。
香りは、最初は甘い印象だったところへ、次第にカリラらしいPeatyさが被さって バランスしてくる。
味わいも、最初は甘い飲み物って言う感じのところへ、樽の個性とタールの個性が 乗っかってきて、良い感じになってくる。
とても美味しい出来だったと思います。
順番を付けるとカリラが頭半分前に出ていて、その次が余市、 さらに頭一つ遅れてグレンモーレンジっていう感じですね。
配当は?(笑)。
5つ星の3つ半から4つくらいのところでしょうか?。
最後にSさん、どうぞ。
まあ、甘さが共通点というのはそのとおりですね。
グレンモーレンジは、ラムが個人的には好きではないというのがあって、 それを考慮したら逆にまあ美味しいということで…。
(一同、爆笑)
余市は、これまでの余市のなかでは甘い方だと思う。
個人的には好きな松や鰹、消毒やいろんな味わいの表情があって、 最後に塩で締めるところが良かった。
これよりも美味しい余市シングル・カスクはあるけれど、 比較的高い評価にはなると思います。
RatingはGood/Very Goodです。
最後にカリラは、ドライなWoodに甘さを被せたところが面白い。
個人的には、やはりバーボンの甘さが好きではないんだけれど、 このくらいまで甘さとカリラらしさのバランスが取れていれば、 美味しさの点で評価することもできる。
Ratingで言えば、やはりGood/Very Goodくらいかなと思います。
カリラについては、カリラ特有のピーティーさに甘さが被さってくる感じが 良いですよね。
こういうのがあっても悪くないかなと。
そう思います。
ただ、ドライなところも感じられる。
矛盾した言い方になるけれど、Dry & Sweet。
ドライを感じる部分もあるし、甘さを感じるところもある。
そのバランスが意外性があるけれど、とても美味い。
今日もっとも意外だったのは、Iさんがカリラを三番目にしたことでしたね。
ええ、私も意外でした。
今日のカリラは、何だか昔の彼氏に突然会ったみたいな気分なんです。
あの時は確かに好きだったし、今も嫌いではないみたいな。
ほお、なるほど。
それは二人だけの秘密でしょ。
みんなには言わない約束だったじゃないの。
ああ、ごめんなさい。(うつむく)
(顔を見合わせ、硬まる)
(顔を見合わせ、硬まる)