テイスティング・ルーム第32回
東京のとあるバーに集まる男女3人。
モルト通とはまだまだいえない初心者からセミプロまでいますが、
自分勝手なことをしゃべっているには変わりありません。
話の内容については、まあ信用できるでしょう。
なにせ呑んじゃってるんですから。
今回のウイスキー
- ダラス・ドゥー ケルティック・レジェンド(リキッド・ゴールド)
- As We Get It アイラカスク8年(イアン・マックロード)
- 1979年アードベッグ17年(アデルフィ)
登場人物
マスコミ関係の会社に勤務。おいしいものをおいしいと言える、20代の素直な女性。
金融関係の会社に勤務する男性。仕事がシビアな割に、舌の方の評価は優しい40代。
昼は国際派ビジネスマン、夜はバー&モルト逍遥の達人。
歯に衣着せぬコメントとおやじギャグが痛快な男性。
とあるバーのマスター。?代の男性。
Iさん、前回は仕事で来られなくなって、残念なことをしましたね。
ラーガン・ミルはよかったね。
ダルモアのブラックアイルも。
本当に残念でした。
テイスティング・ルーム(31回)を読んで、 もう悔しくって、口惜しくって。
まあまあ、今日は、秘蔵の一本も用意してきましたんで。
それでは、始めることにしましょう。
わ~い。
今日の3本は、2本がニューリリースで、1本がうちの在庫から 引っ張り出してきたオールド・ビンテージです。
楽しみですね。
ダラス・ドゥー ケルティック・レジェンド(リキッド・ゴールド)
最初の1本が、リキッド・ゴールド社のケルティック・レジェンド・ シリーズのダラス・ドゥーですね。
蒸留が1979年、アルコール度数はナチュラルで52度です。
ご存知のとおり、ダラス・ドゥー蒸留所は、 1983年に閉鎖されておりまして、 現在は博物館になっています。
つまり、今後一切、再開されることのない 幻の蒸留所のひとつですね。
ダラス・ドゥーは、過去においては、 良質なモルトを作るという評判を得ていながら、 ブレンデッド向けが中心で、あまりシングル・モルトを出していない 蒸留所でもありました。
ところが、近年のモルトブームの影響もあって、 最近では、ボトラーがここのシングル・カスクを出すように なってきています。
また、1983年に蒸留所が閉鎖された後、1986年に、 オーナーであったSMD社が蒸留所建物・施設を、 スコテッィシュ歴史的建造物および記念碑保存委員会に寄贈しました。
その際に、蒸留所の保管庫にあったモルト樽も併せて、 そのスコテッィシュ建造物保存委員会に寄贈されており、 その樽から瓶詰めされたシングル・モルトが、件のダラス・ドゥー博物館に行くと、 「オフィシャル(?)」と称して販売されています。
みなさん、もうご存知ですよね。
このスコティッシュ建造物保存委員会が、あのスコッチ文化研究所の 下部組織になっていること。
そして委員長が土○守氏であることを(爆笑)。
だったら良かったんですけどね。(やや苦笑しながら)
原酒の樽まで寄贈してしまったんですか?。
蒸留所の施設内にあったものだけだと思いますがね。
ダラス・ドゥー蒸留所で作られたモルトは、1929年から長らく蒸留所を保有してきた UDV(旧DCL)の集中保管庫にそのほとんどが保管されていますので、 寄贈されたモルトは蒸留所施設内にあった一部の原酒ということです。
UDレアモルトから出ているダラス・ドゥー21年(1975年蒸留、61.9度)は その集中保管庫にあったものでしょうね。
幻の蒸留所の、ナチュラル・カスクの、ニュー・リリースですが、 みなさんの感想を聞かせてください。
(グラスを掲げながら)色は、琥珀とゴールドの間くらい。
香りは、う~ん良い香り。
マンゴーかしら。
バニラ・ファッジ。
エドラダワーの甘酸っぱい個性、 赤ちゃんのGeを10倍くらい良い香りにした感じ(笑)。
Geを良くするって、なんだよそれ、と思うけど。
わかりますね。
想像力や感性って、本当に自由だよね。
ああ、本当に良い香り。
甘い。
ビネガーと梅酒のミックスされた香り。
ああ、わかります。
言われると感じられる。
蜂蜜。
確かに、蜂蜜もでてますね。
香りは微妙な範囲のなかで、複雑に変化していきます。
かなりデリケートな香りですね。
ダラス・ドゥー蒸留所が、良質なモルトを作っていたという評価を、 実際に確認させてくれる感じです。
本当ですね。
ここの蒸留所が閉鎖された時に、惜しいとか、勿体無いとかいう 意見が多かったのも頷けますね。
釜炒りの煎茶の香りが出てきた。
なるほどね。
で、味の方はいかがでしょうか?。
美味しい。
すっごく美味しいですう。
でましたね、Iさんの最上級評価。
香りで感じられた蜂蜜の個性が口の中、舌の上に出てきている感じです。
それでも、蜂蜜のようなクドさはなくて。
はい、そうですね。
うん、予想以上に、スーっと入ってきますね。
シロップのようです。
舌の上を、軽く、甘く通り過ぎていって、後半にスパイシーさが出てくる。
口のなかに、微かなほろ苦さと青さがバランスしていて 爽やかな印象が出てきますね。
そうそう。
蜂蜜の甘さの後に。
意外にピーティー。
おそらくピートは使われていたでしょうね。
ピリピリするよね。
ええ、ピリピリとスパイシーでピーティーですね。
だんだん口にピートが溜まってきた。
三口めくらいになってくると、もう最初の甘さよりも 後半のスパイシーな印象が中心になりますね。
渋いですねぇ、ほんとに。
ありがとう(笑)。
うふふ。
ああ、わしのことじゃなくて、このダラス・ドゥーね。
ところで、渋いって、英語では何ていうんですか?
難しい質問ですね。
渋いも、苦いも、bitterだと思う。
あとエグみに近い表現でastringentていうのもあるけれど。
大体は、渋いも、苦いも、エグいも、bitterだね。
同じになっちゃうんですか。
料理研究家とかは、もっといろいろな表現をすると思うけれど、 一般大衆はかなり大雑把だからね。
へえ。
梅干のような口が収縮する感じのエグみは、 “mouth-puckering”と表現することもあるけど、あまりよく使うわけでもないね。
このダラス・ドゥーの味わいについてなんですけど、一口目、二口目、三口目と 飲み進むうちに、舌の上の味わう場所が、奥へ奥へ奥へと 進んでいくところが面白いですね。
最初、甘い甘い液体、次が甘酸っぱさとスパイシーなピリピリ、 後半が苦味と渋みの余韻。
モルトのなかには、味わいのテイスティングと、余韻のフィニッシュが断絶してしまうものも 多いんだけれど、これは一貫した流れのなかで繋がって感じられていく。
確かにいいですね。
最初の甘さの印象は何かな。
蜂蜜とシロップ。
前面に出てきているのはシロップですね。
シロップというのは?。
アイスコーヒーとかに入れるガムシロップです。
確かにそうだね。
蜂蜜よりもガムシロップ。
質感もサラっとしているし。
本当に美味しい。
ピートは最後に行けば行くほど積もってきますね。
あと、だんだん味わいも濃厚になってきました。
それは、アルコールが抜けてきたため?。
それとも、舌が痺れて麻痺してきたから?(笑)。
いずれにしても最初のサッパリした軽い印象はもうありません。
最後のところで、乾燥したオレンジピールも出てきた。
甘味のある苦味、スパイシーさ。
だんだん変わってきますね。
面白い変化がいいですね。
香りに、また赤ちゃんのGeが出てきました。
本当だね。
最初は、エドラダワーの10倍くらい良い香りって言ったけれど、 今はエドラダワーの3倍くらいだね。
ちょっとGeが強くなってきている。
でも、これが嫌じゃなくなっている自分がいる。
赤ちゃん、いる?。
それとも赤ちゃん、ほしい?。
チッチッチッ、それはセクハラですよ。
うふふ。
でも、この程度ならば許容範囲のなかですよ。
僕自身としては。
セクハラが?。
いいえ、甘酸っぱさです。
まあ、エドラダワーほど不快ではないっていうことには同意するけどね。
As We Get It アイラカスク8年(イアン・マックロード)
それでは、2本目に行きましょう。
イアン・マックロード社瓶詰のAs We Get Itのアイラ・カスク8年です。
これはドイツ向けなんでしょうかね。
ドイツ向けというわけではないみたいですね。
As We Get Itは、従来から別の業者が持っていた 商標だったんですね。
それなりに知名度もある。
それを最近、イアン・マックロードが入手して 出してきているみたいですね。
ラベルの印象はかなり変わってしまいましたが、 以前はマッカランなどもありましたね。
どこのモルトなんですか?。
だからアイラのモルト。
だから、そうじゃなくて。
スコットランドのモルト。
もお、いぢわる。
中身はラガヴーリンだと言われてますね。
それで、前回(32回)でテイスティングしていただいたラーガン・ミルと同じように、 ラガヴーリンかどうか、実際に確認してみようというわけです。
アルコール度数は?。
58.5度ですね。
アイラ好きのIさん、しっかりコメントしてくださいね。
はいっ。
色は薄いですね。
香りの方はいかがですか?。
最初に感じるのは段ボールの香り。
この段ボールは、ラガヴーリンだと思うね。
私は、最初に消毒薬を感じますね。
僕の印象では、一番最初が段ボールで、その後から 消毒薬が出て来ているんですが。
ああ、本当に。
消毒薬ですね。
かなり強い刺激ですね。
目に来るような。
ニュー・ポットの強さ。
確かにニュー・ポッティですね。
色をみると、ラガヴーリンらしい赤っぽさが出ていないんですよね。
まあ、こういうような、ボトラーズの若いものには、蒸留所の典型的な 個性を持つものは逆に少ないように思うね。
まあ、確かにそういうことはありますね。
消毒薬の刺激が少し弱まって、歯医者っぽくなってきた。
ああ、そうですね。
そろそろ味わってみましょうか?。
ほお、味わいは、香りで感じる印象よりもヘビーですね。
ズーンと来る。
重たい。
煙ったい味。
タバコみたい。
確かに煙ったさもあるね。
香りと全然違いますね。
病院ぽさも残っているけどね。
口のなかが麻痺するみたいな感じですね。
トップの香りだけを嗅いでいると、もっとサラサラした質感ではないかと 思ってしまうんだけれど、口に含むと全く違うんですよね。
わしにとっては、ラガヴーリンの段ボールなんだけどね。
僕にとっては、段ボール、歯医者の香りと、 口に含んでから出てくる香ばしさがラガヴーリンですけど。
ううん・・・私には、まだ香ばしさまで来ていないですね。
ちょっとラガヴーリンとは判断しきれない。
カリラに出てくるタールの特徴も感じるんだよね。
確かに、カリラっぽいタールもあるけれど、カリラなら、 こんなに重たいものにはならない。
ズーンと来る質感とパワーは、ラガヴーリンだろうと思う。
ただ、このAs We Get Itには、いつもラガヴーリンの個性として感じられる 「焦げ」が出て来ていないんですよ。
なるほど。
前回のラーガン・ミルは、一口目からハッキリとした焦げがありましたからね。
前回のは、香ばしさがハッキリとありましたね。
それに比べれば、これの香ばしさは弱いね。
すいませ~ん、典型的なラガヴーリンと典型的なカリラをハーフショットで下さ~い。
何にしましょうか?。
カリラは花と動物、ラガヴーリンはオフィシャル12年あたりでは?。
ラガヴーリン12年はあります。
カリラの花と動物は、たまたま切らしてるんですよ・・・。
そうだなあ、あれにしましょう。
オフィシャルのカリラ43度。
確かにカリラでは、タールを感じますけど、 ラガヴーリンに出てくる病院の消毒液とは違うんですよね。
ああ、そうですね。
カリラについて言えば、スミッソンさんの言うタールというのは、 私の表現では石炭なんですがね。
すいませ~ん、タールをハーフショットと、石炭をハーフショットお願いしま~す(爆笑)。
すいません、馬糞をハーフで下さい。
カレーパウダーもお願いしま~す(笑)。
あと赤ちゃんのGeも。
こらこら。
悪乗りしすぎ。
フィニッシュには粉っぽいシナモンを感じるんだよね。
なるほど、シナモンね。
この間飲んだときには、バリバリのニュー・ポットだった。
今日のはフィニッシュに10年くらいの熟成を感じるんだよね。
口内熟成していく感じがある。
さて、比較用の2杯がご用意できました。
ラガヴーリン12年のカスク(58度)とカリラ12年(43度)です。
(飲む前から)カリラのタールとラガヴーリンのボディ。
ははは、じゃ、どうぞ。
(各自サンプルを回していく)
明らかに、このサンプルはカリラで、こっちのサンプルはラガヴーリンなんだけど、 やっぱり、このAs We Get Itの方は決められない。
香りの個性に出てくるタールは表情のひとつだと思うんですよね。
僕の鼻では、ラガヴーリンの病院・消毒香も感じるし。
で、液体の質感は、まさしくラガヴーリンだと思うんですけど。
ボディ感はそうなんだけれど、味わいにラガヴーリン独特の 香ばしさがないんですよね。
カリラとラガヴーリンのヴァッテッドということはないんですか?。
残念ながら、ラベルにはシングルモルトって書いてあるんですよ。
イアン・マクロードの担当が新人で、ラベルの表記を間違えたとか。
それなら辻褄が合うんですけどね。
この年数のモルトにしては飲み応えのある、良い出来ですよね。
最初の香りの刺激は目に来ますけど、アイラピートの個性としっかりした ボディ感があって、後味も甘くて。
ちょっとこれ飲んでみてくれる?。
カリラとラガヴーリンを混ぜてみたんだけど。
これが一番、近いですね。
本当にそうですね。
今日のAs We Get Itは、前に飲んだときよりも、年数らしい熟成感があって良かった。
僕は逆ですね。
某店で以前に飲んだときの方が熟成した感じがありましたね。
今日は少しニュー・ポッティな感じが強くあったから。
これは、まあ多分ラガヴーリンなんでしょうね。
世間で言われているように。
アイラ島の蒸留所で言えば、どこも使用している麦芽やピートには 大差ないとは思うんで、似たような個性が出ることはあるんですよね。
ただし、ラガヴーリンの香ばしさは、原料に由来するのではなく、 ポット・スチルから来ていると思うので。
それで、今ひとつ腑におちないんですね。
だから、イアン・マクロードの新人が、ヴァッテッドと書かずに…。
まあまあ。
1979年アードベッグ17年(アデルフィ)
それでは、今日の三本目に行きましょう。
よっ、大統領!。
待ってました。日本一!!(笑)
アデルフィー瓶詰のアードベッグ17年です。
蒸留が1979年で、瓶詰が1996年ですね。
日本では1997年頃に発売されて、 すぐに売り切れてしまって幻のボトル、 日本でのファースト・リリースです。
そして全く知名度の無かった新興ボトラーを 一躍有力ボトラーに引き上げたと言う。
そうです。
これで、アデルフィーはメジャーになりました。
97年に発売されたということは、もう6年前のことなんですね。
そうなります。
これを置いている店はもうありませんね。
アルコール度数は何度ですか?。
63.2度です。
うわっ、高いですね。
この後、アデルフィーはアードベッグを次々とリリースしたのですが、 このファースト・リリースを超えるものはなかったと思います。
私も久々に飲めるのが、とても楽しみです。
その後に出たアードベッグも17年熟成だったのですか?。
確か。
18年、19年くらいまで続いていったように思いますね。
79年の17年熟成が、そのアードベッグのファースト・リリースということですね。
ええ、そうです。
確かセカンド・リリース以降は、短期間に出てきたのですが、 蒸留年が78年とか76年とか遡っていき、熟成年数も長くなっていったんです。
なるほど。
みなさんが経験されたアードベッグと比べて、いかがでしょうか?。
ポッと出の新興ボトラーに絶対的な評価を与えられるでしょうか?。
信仰できるほど(笑)。
色はあまり濃くないですね。
飴色。
香りは強いアルコールの刺激が来ますね。
塩素系。
そうそう。
塩素系はアードベッグの70年代の特徴だそうです。
アードベッグ専門家の菱木さんに寄れば。
Iさん、菱木さんて知ってる?。
すいません、いつも不勉強で。
神田多町に、Deuceというバーがあります。
そこのオーナーが菱木さん。
お店には100種類くらいウィスキーがあるんですが、その半分がアードベッグ。
へえ、そうなんですか。
アードベッグ・コレクターの菱木さんがやっているバーなんです。
そうそう。
一度は行ってみるべきです。
度数なみのアルコール感がありますね。
Woodyですね・・・あとカンゾウの香りかな。
溶剤っぽいんだけど、甘さもある。
鼻への刺激がちょっと強くて。
味わってみましょうか?。
味わったことはないので、インスピレーションなんですが、 ニトログリセリンの甘さって、きっとこんな感じじゃないのかなと。
味わうと、鼻に来ていた刺激はなくて、甘いですね。
すごく練れた甘い液体で。
甘さはまろやかなんですが、だんだんとピートが出てきますね。
後から徐々に来る。
これは、よく出来たアードベッグの特徴だね。
かなり甘いけど、かなりピーティー。
そのバランスが取れているところ。
なんかファースト・リリースされた当時の印象よりも 落ち着いているような感じがしますね。
1997年に飲んだときには、もっと鮮烈な印象があったような気がします。
封開けから2~3日たつと、もっと変わってくると思います。
本当に素晴らしいですね。
さっき飲んだダラス・ドゥーは、徐々に甘さからピートやスパイスに 切り替わってしまうので、3口か4口目には、もう甘さの方には戻れない感じが あるんだけれど、こっちのアードベッグの方は、ピートが出てきても、 しっかりと最初の甘さが残っていて、バランスしているところが良いですね。
ピートの余韻は積み上がっていくんですけどね。
アルコール度数の割には、しっかりと甘さもあるし。
そうですね。
ビターな後味も出てきた。
潮っぽさも出てきましたね。
ただ、アードベッグのマネージャズ・チョイスやプロヴィナンスで感じたような 饐えた、黴くさいピート感が、これには出てきていないんですよね。
それが、私にとってのアードベッグらしさなんですが。
このアードベッグについて感じるのは、70年代の特徴が出ているけれど、 再開後の90年代初頭の特徴も少し窺わせるところがあるようにも思うね。
ほう?。
酸味のあるウッド。
やや乳酸系の印象がある。
この液体の薄い色からみて、やや疲れた樽のような気もしますね。
アードベッグ蒸留所に元々あった樽ではないのかも知れません。
樽自体が外部から持ち込まれている可能性があると。
ええ。
しかも、貯蔵自体もアイラ島ではないかもしれない。
今の香りの印象は火を付けた煙草。
煙いスモークとタール。
でも残りの味わいはとっても甘い。
定連さんに、これがとても好きな人がいて、 最初にこのアードベッグを出したときには、「血の香り」がすると 言っていたことを思い出しました。
そうですね。
塩っぽさとピートの土っぽさの部分かな、強いて言えば。
フィニッシュは塩胡椒みたい。
そうですか。
僕は、ピートと塩は感じますが、ペッパーは感じませんね。
わしは、ピートのなかに黒胡椒を感じることがあります。
それですね。
あとクローブ。
今日は、3杯ともクイクイとストレートで飲んでしまって、 加水するのを忘れてしまいました。
そういえば、一杯も加水しなかったのは初めてかもしれませんね。
それでは、総評に行きましょうか。Iさん、どうぞ。
えっと、一番インパクトがあったのがダラス・ドゥーですね。
アイラどっぷりだった少し前の私だったら、As We Get Itに飛びついていたと思います。
スモークと消毒が堪らない魅力に思えて。
そしてアデルフィーのアードベッグは、上質な高いお酒を飲んだっていう 感じがあります。
強い個性があって、しかも上品で、それが高いレベルでバランスしていて。
でも、でも今日の3本は、3本とも美味しかったです(笑)。
ほぼ印象は、Iさんと合っていると思います。
As We Get Itのアイラ・カスクは、以前に西麻布のMで飲んでいるんですが、 先程言ったようにニュー・ポットのような印象はほとんどなくて、 自分の持っているラガヴーリンのイメージをトレースしているようなところがあったので、 かなり高い評価を付けました。
ところが今日は、最初の刺激が強すぎたところが気になって、 ラガヴーリンらしさに浸りきれないところがあって、ちょっと残念に思いました。
しばらく時間をおくと良くなるかも知れないので、また飲んで確認してみます。
ダラス・ドゥーは、軽さをもったスペイサイド・モルトとしては、 おすすめなんじゃないかなと思います。
バニラ、蜂蜜、ビネガーとか様々な表情を持ちながら、甘さからピートへ重心が移っていく。
この変化がまた面白い。
で、最後に飲んだアードベッグは、Iさんが言うように高級なイメージがあります。
ベンツのような高級車かな。
最初に口に入れると上品な甘さがあって、一口含むごとに、 重厚なピーティーさが塗り重ねられてくる。
そして、上品な甘さとハーモニーを奏で始める。
それからアイラっぽい塩が加わって、スモーキーな余韻が長く続いていく。
とても素晴らしい出来のアイラ・モルトだと思います。
ダラス・ドゥーは、香りの変化は良かったけれど、味わいにファッジっぽさが出て、 だんだんと乳酸が出てきたところが気になった。
赤ちゃんのGeも、後半に行く程に強くなってきたし。
As We Get Itについては、前に飲んだとき良くなっていると思うけれど、 自分にとっては、もう少し熟成感がある方がいいかなと。
まあ、また飲みたくなるモルトだとは思うけれど。
アードベッグは、美味しいモルトと思う。
塩素の味、トロリとした甘さ、ピリピリ来るピート。
そして、これらの個性のバランス。
わしとしては、これは幻のモルトに入ると思うけれど、 その幻に匹敵する最上級評価を付けられると思う。
だから、こういうモルトとの出会いが嬉しい。
まとまったところで、Sさんにもう一杯用意しました。
ちょっと飲んでみてください。当店の今月のおすすめです。
ブラインド・テストですね。
オレンジと乳酸の香り。
(口に含んで)グレープフルーツのワタ。
あとピートがあって・・・これ、ボウモア?。
そうなんです。
グレープフルーツのワタ出てるでしょ。
私にとっては、葡萄の種なんですけど。
香りに乳酸があるし。
う~ん。
僕もびっくりしたんです。
やっぱりボウモアかな。
トップの香りはピートよりグレープフルーツなんですもんね。
答えは何?。
クレゾールやピートが出てないんですよね。
それでびっくりしたんです。
最近のボウモアに近い感じだよね。
答えは、ラフロイグ。
ラフロイグ?。
ハッハッハ、ほんと?。
これ、3年くらい前のラフロイグです。
ヨーロッパ向けの40度なんです。
全然消毒っぽくないですね。
味わいも全然違う。
もしかしたら、ヨーロッパ向けのラフロイグはみんなこうなっているんじゃないかな とも思ってみたり。
輸出国向けに、ラフロイグの味が全く違うという仮説ですね。
この味がラフロイグだったとしたら、さっき飲んだAs We Get Itは マッカランかも知れない。
奥が深いですね。